[Date Prev][Date Next][Thread Prev][Thread Next][Date Index][Thread Index]

[jamsat-bb:7627] Re:リニアトランスポンダーについて


JF6BCC 今石です。

At 2001/02/26 13:23:26 S. Nakashima wrote:
> 衛星造りに興味のある方!先輩諸氏に今のうちに質問しましょう!!!

# 私が応えるべきではないのでしょうけど (^^;)。

> リニアトランスポンダはどんなしくみなのでしょうか?
> ヘテロダインや逆ヘテロダインで受信電波が変換されて
> 送信されるまでの事を

  原理的には「トランスバータ」と何も違わないんですよね。例えば FO-29
は、145.900〜146.000MHz を 435.900〜435.800MHz に変換するトランスバ
ータです。
  一定の帯域外の信号が変換されないように、受信機(または途中の IF)で
100KHz 等、一定帯域のフィルタを通っていること、ドプラーシフトを追う
のに都合がいいように、周波数がリバース変換になっていること、入力レベ
ルがトラスンバータと違って小さいため、減衰パッドが無く、受信アンプが
入っていること、母信号が外部から入ってくるため ALC の帰還先が無いこと、
送受信の2系統はなく1系統の一方通行であること、など、地上通信用のト
ランスバータとは違う部分もありますが…。

  とは言え、

> 小学生とまではいきませんが、4アマでも判るように
> 解説したものをご紹介いただければ幸いです。

  となると…、トランスバータとは何か、と言う詳しい説明の書籍すら、出
ていないのが実情ではないかな、と…。私も、そんな書籍を見た記憶がない
んですよね。

  それに「じゃあトランスバーター」って何?、って言われると…むむむ、
私は説明に窮してしまいます。非直線素子を使って複数の周波数を混合する
ことにより、複数の周波数の和と差の周波数が取り出せる特性を利用して、
あるハムバンドの無線機の入出力を別のハムバンドに持っていく装置…って
説明で理解してもらえる相手だと話は早いのですが、それは?、って聞かれ
ると、後が続きません (--;)。
 4アマの試験に「周波数変換」の問題って出ましたっけ?。周波数変換の
話は、受信機の構成ってところで出ているはずですが、まあ、仮に出題され
ていたとしても、丸暗記で合格してその後何も勉強しない人も少なくないで
しょうし…。どの位の基礎知識を持っている人を対象とすべきなんでしょう
かね。

  でも、小学生に「145MHz で届いた電波を、そのまま 435MHz に変換して再
送信する装置だよ」って説明すれば、納得はしてくれるとは思いますけど、
それじゃ科学的な啓蒙活動とは言えないですよね (^^;)。

> 「通信衛星の造り方」などという本はありますか?
> 興味があっても、どこから手をつけて良いのやら、
> 皆目見当がつきません。

  ARRL から取り寄せた Satellite Handbook は、まだ冒頭部分をちょっと読
んだだけですが、内容は主に「衛星を作る体験記」です。ほかに Satellite
Anthology って本も取り寄せました(こちらは手違いで2冊あります。欲し
い人はご連絡下さい、譲ります)が、過去の衛星に関する様々な話の集大成
ですね。どちらも、使う側の立場の本ではありません。
  無論、英語の本ですし、内容はかなり専門的、かつ、断片的(手に入る資
料を集めて本にしたと言う感じ)ですので、これを仮に翻訳出版したところ
で、入門書として役に立つレベルではないと思いますね。他に ARRL の書籍
には、サテライト入門に的を絞ったものは無いようで、おそらく「運用マニ
ュアル」的な書籍で扱っているだけなのではないかな、と思っています。

  ただ、衛星の製造に携わろう、と考える人であれば、Satellite Handbook
のような、専門的・断片的な書籍で充分なのかも知れないな、と思います。
太陽電池パネルや充電池などの最新技術と部品の情報、衛星の挙動を理解す
るための物理学・天文学の知識、放射線と電子機器の関係、温度設計、打ち
上げ機関との交渉や調整…こういうものを実行できる人材には、高度な科学
知識と理解力、英語力、交渉力が必要ですし、そのうえで、目的のために雑
多な情報を選択し、必要なシステムを構築する構想力も必要です。

※日本のCQ出版社の「サテライト・ハンドブック」とは違いますよ。こち
  らは使う方が主眼の書籍ですね。

  また、この書籍に載っていないような高度な内容は、メーカーや大学など
の「秘密」や「特許」の壁の向こうにありそうな気がしますね。

> 例えば、オーム社から出ている野坂・村谷先生の
> 「衛星通信入門」が判りやすくて良いのですが、
> もうひとつ踏み込めないかなぁと思います(値段も高い本です)

  該当の本は読んだことがないのですが、業務の衛星通信技術者向けの入門
書なんでしょうか?。どんな構成なんでしょう。

> -----素朴な疑問------------------------------------
> Q1;FM系は受信機で一旦復調した信号を
>   改めて送信しなおすのでしょうか?

  そうですね。AF レベル(デジタル衛星であれば元符号のレベル)まで
復元してから、再度送信機で変調をかけています。FM レピータ衛星の場
合は復調・変調とも FM 変調ですが、デジタル衛星の場合は送受信でそ
れぞれ変調方式が違うのが一般的ですね。

> Q2;SSB/CWでは何処まで復調してるんでしょう?
>   なんで逆ヘテロダインだとアップLSBでダウンがUSBなんでしょう?

  復調はしてなくて、単に RF(1) -(変換)-> IF -(変換)-> RF(2)、また
は直接 RF(1)-(変換)->RF2 ですよね。FO-12/20/29 は IF なしの直接変
換だと思いますが、AO-40 は周波数マトリクスによる切換機能のために
共通 IF が存在しますね。
  RS 衛星は旧ソビエトの衛星なんで、鉄のカーテンの向こうの技術はよ
くわかりません (^^;)。たぶん前者でしょうね。

  アップ LSB & ダウン USB なのは、なぜなんでしょうね?。個人的には、
まだ SSB を作るのが難しく部品も高価だった時代は、USB しか実装して
いない V/UHF の無線機が多かったので、まずは受信しようという時に既
存の無線機を使えるように、ダウンリンクを USB にしたからだ、と思っ
ていますが…。
  そもそも、14MHz 以上が USB で 7MHz 以下が LSB、と言う習慣も、14MHz
の SSB 機や 9MHz 付近の SSB ジェネレータ(USB だけ) で HF のマルチ
バンド機を作ろうとした時に、便法として生まれたものですよね。例えば
9MHz の USB を 7MHz の USB にするには 2MHz で混合させることになり
ますが、これだとイメージが 11MHz のような、近い上に放送波の多いと
ころに出てしまいますから不適切で、それよりは、9MHz に 16MHz を混
ぜて差の 7MHz を取り出すようにした方が、和が 25MHz と離れたところ
に出てくる分だけ有利だ、ってことです。14MHz->7MHz でも同様ですし、
こちらは混合する7MHz と目標の 7MHz が近過ぎるると言う問題もありま
す。
  無論、最初の SSB ジェネレータが LSB なら話は反対になる訳ですが、
この部分は、電流の向きと電子の移動方向が逆だというのと同様に、歴
史的な「偶然」だと思います。SSB ジェネレータを設計するときに USB
の方が理解しやすかったからでしょうね、きっと。
  そういう訳で、和の変換であれば、USB->USB になりますが、差の変換
では USB->LSB になります。SSB の黎明機は、両サイドバンドを自由に発
生させられるSSB ジェネレータは実現が困難でしたから、それが LSB と
USB の使い分けを産むことになったのでしょう。で、その延長上に衛星通
信もあると言う訳ですね。

  こんなところじゃないでしょうか?。

  逆ヘテロダインの有利さについては、どなたかがきっとフォローしてく
れるでしょうし、そしたらきっと誰かが、RS 衛星が逆ヘテロダインにな
っていない理由も説明してくれるんじゃないかな〜 (^^;)。

> お金は働き盛りにがんばってもらう(私も?)として、

  リタイア世代にもがんばっていただきましょうよ (^^;)。現役世代は負
担が重過ぎますので。

では。
- -
Yoshihiro Imaishi 今石良寛 - 福岡県北九州市
JF6BCC, KH2GR (ex. T88J, T88IY, V63BP)
jf6bcc@jarl.com or jf6bcc@jamsat.or.jp
<http://plaza16.mbn.or.jp/~palau/> 
- -
この電子メールは100%再生電子を使用しております。:-)