AO-40/P3Dアップデート
JAMSAT
JAMSAT 日本アマチュア衛星通信協会

AO-40/Phase 3Dアップデート 2001年6月

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JAMSAT SCOPE Team



From: "Takeyasu" <takeyasu@terra.dti.ne.jp>
To: <jamsat-news@jamsat.or.jp>
Subject: [jamsat-news:1521] AO-40: アークジェット噴射の続報
Date: Sat, 23 Jun 2001 21:59:30 +0900

皆様、

AO-40コマンド・チームのDB2OS Peter Guelzowから、アークジェットの噴射について続報がありました。

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オービット296周回のMA118-135の約1時間にわたってアークジェットの噴射(ガスのみ)を行いました。

ATOSに電力を振り向けるため、MA100-180でS2送信機はOFFとなります。アンモニアのガス発生器はサーモスタットでON/OFFされて120Wから130Wの電力を消費します。

IHU-2の運転を行ってテレメトリを取得し、約2.5日分の有意なデータをサーキュラ・バッファに蓄積しています。今回の一時間の噴射に関してテレメトリをダウンロードしたところ、電力の収支はプラス(発電が消費を上回る)であり、全ては正常のようです。

296周回での噴射はMA121.4に始まり、3618秒間で終了しました。この噴射による加速度は、54E-6 m/s^2 と推定しています。加速度の方向は、ALON/ALAT=274/-2(現在の衛星姿勢)です。

不確定要素はあるものの、今回の噴射で期待していた結果は次のようなものでした。

噴射前 噴射後
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Epoch year 2001 2001
Epoch time 173.12145 173.16312
Inclination 5.2833 5.2833592
R.A.A.N 180.71591 180.70361
Eccentricity 0.815077 0.8150139
Arg perigee 288.69088 288.71333
Mean Anomaly 121.4 140.46836
Mean motion MM 1.2711484 1.2710861
Revolution 296 296
SMA 36003.6 36004.773

Perigee height 279.754 282.2427 <<< +2.5 km
Apogee height 58971.166 58971.024
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一時間の噴射によって近地点高度が約2.5km高くなるものでしたが、噴射率としては50%を想定していました。

全てが上手くいったので、2時間の噴射を297周回の遠地点付近で開始し、続く3周回にわたって同様に噴射するように、AO-40の搭載コンピュータが設定されました。

最初の2時間の噴射は297周回のMA142で、すなわち2001年6月23日の0154UTCに停止しました。今回も全てのテレメトリが正常であり、ほどなく噴射時間を4時間まで延長する予定です。また、噴射のレベルも同様に増加させるでしょう。

最新のNORADの軌道データをまだ見ていませんが、軌道変更の兆候がまもなく現れてくるはずです。

ここまでのATOS(Arcjet Thruster on OSCAR Satellite) の成功にAO-40チームの全員がひじょうにハッピィです。

ATOSに関する更なる情報は次のURLで得ることができます。

http://www.irs.uni-stuttgart.de/RESEARCH/EL_PROP/PROJ/e_atos.html

AO-40チームを代表して、
best 73s
Peter DB2OS
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JAMSAT SCOPE プロジェクトチーム
武安
ja6xkq@jamsat.or.jp



From: "Takeyasu" <takeyasu@terra.dti.ne.jp>
To: <jamsat-news@jamsat.or.jp>
Subject: [jamsat-news:1519] AO-40: ビーコンが一時的にOFF
Date: Sat, 23 Jun 2001 18:01:02 +0900

皆様、

6月23日付けのAMSAT-DLのウェブサイトによると、AO-40のS2ミドル・ビーコンがMA100からMA180の期間、OFFになるとのことです。アークジェットの噴射が開始されましたが、ガス発生に約125Wから130Wの電力を消費するため、そちらへ電力を振り向けるための措置です。

JAMSAT SCOPE プロジェクトチーム
武安
ja6xkq@jamsat.or.jp



From: "Takeyasu" <takeyasu@terra.dti.ne.jp>
To: <jamsat-news@jamsat.or.jp>
Subject: [jamsat-news:1518] AO-40: アークジェットの試験噴射成功
Date: Fri, 22 Jun 2001 08:53:33 +0900

皆様、

AO-40コマンド・チームのDB2OS Peter Guelzowから、アークジェットの試験噴射について広報がありました。

(翻訳はJI1OWP/池田さん、TNX)
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ATOS(Arcjet Thruster on OSCAR Satellite、アークジェット・モータのこと)の推進剤供給システムの初回動作試験が、オービット#295で成功裏に完了しました。

テレメトリでは、アンモニアを熱するヒーター、流量調整器、バルブと圧力計がうまく動作しているらしいことが確認されました。

ガスの噴射時間はおよそ22分間で、今後の試験で噴射時間を長くしていきます。

コマンドチームのまたひとつの素晴らしい業績に祝福を!


AO-40チームを代表して、
73s Peter DB2OS
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ATOSを開発したシュッツガルト工科大学のサイト

http://www.irs.uni-stuttgart.de/RESEARCH/EL_PROP/ATOS/e_atos.html

を見ると、アークジェットの配管系が理解できます。また、
AMSAT-DLのサイト

http://www.amsat-dl.org/journal/adlj-p3d.htm

には、衛星姿勢を確認するためにアークジェットの試験に先立って取得されたYACEカメラの画像が掲載されています。従来の画像に比べてコントラストが良好で、衛星スピンによる画像の歪みも補正されており、一見の価値があります。

JAMSAT SCOPE プロジェクトチーム
武安
ja6xkq@jamsat.or.jp





From: "Takeyasu" <takeyasu@terra.dti.ne.jp>
To: <jamsat-news@jamsat.or.jp>
Subject: [jamsat-news:1516] AO-40: アークジェット試験噴射による近地点高度の上昇
Date: Mon, 18 Jun 2001 09:51:19 +0900

皆様、

AO-40コマンド・チームのDB2OS Peter Guelzowから、アークジェットの試験噴射について広報がありました。

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AO-40の姿勢はALON/ALAT=270/0に近づきつつあり、間もなくアークジェットの試験が計画されています。

システム全体を確認するためと近地点高度をいくらか(数値は後述)上昇させるために、最初の試験はアーク放電無しでアンモニアガスだけを噴射させて行われます。

アークジェットの性能に関しては、不確定要素が多々あります。一番重要な要素は、AO-40の実際の質量です。ガスだけを噴射した場合、ガスの噴出速度(約注:原文では比推力Isp[Specific Impulse、単位は秒]であるが、用いている単位と意味からガス噴出速度と判断)は、1000m/sのオーダーが期待できます。アーク放電でガスを加熱した場合、ガス噴出速度は4000m/s、あるいは4500m/s位に達するものと考えられます。衛星質量を500kgとした場合、アークジェットの噴射で500m/sのデルタv(速度変化)が得られるでしょう。
一方、アーク放電を行わない場合は、100m/s程度の速度変化しか得られません。

近地点高度を上昇させるには、上昇分100kmにつき約7.25m/sのデルタvが必要です。

衛星の質量を約500kgと仮定すると、近地点高度を100km上昇させるには、アーク放電無しでは3.6kgのガス消費(全量50kg+)が必要となります。一方、アーク放電有りでは、約0.8kgのガス消費と、1000Wの消費電力で10時間のアークジェットモータの運転が必要となります。アーク放電無しで、ガスの流量調整器(マス・フロー・レギュレータ:MFC)が毎秒20から30mgの流量に調整していると仮定すると、トータルでの噴射時間は30時間から40時間ということになります。

500kgと仮定している衛星質量からして、軌道傾斜角を大きく変えることはできませんが、16時間周期の軌道を得ることはまだ可能です。16時間周期が得られると、現状の可視条件がかなり改善されることでしょう。

軌道傾斜角が変化しないものとして、近地点高度をパラメータとした16時間周期を得るのに必要なデルタvは次のとおりです。

500 km 77 m/s
1000 km 120 m/s
2000 km 200 m/s
4000 km 350 m/s

アーク放電を行わずに16時間周期を得ようとすると、近地点高度が750kmを超えて上昇することは有り得ません。

まとめ:
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1) 初回試験として、アークジェットの高電圧/電力回路を気にする必要はない。

2) 遠地点付近で長時間のガス噴射が可能である。この為にアーク放電や太陽電池パネルの展開は不要である。

3) 得られる推力は、アーク放電を行った場合よりもかなり小さなものであるが、バッテリ状態を気にすることなく、各周回でより長時間にわたってガス噴射が可能である。また、ガス噴射だけで近地点高度をより短時間で上昇させることが可能である。

4) ガス噴射だけで近地点を100km上昇させるためには、毎時0.1kgの消費で40時間、すなわち総合で4kgのアンモニア消費となる。

5) この推力は、TMFC(流量調整器)の60%のレベルであり、毎秒27mgの流量である。

6) 近地点高度を200km上昇させようとすると、20周回にわたって遠地点付近で4時間のガス噴射を行えばよい。

7) その場合、アンモニアの消費量は全量53kgのうち8kgとなる。

8) 流量調整器を95%に設定して、遠地点付近の8時間でガス噴射を行えば、10周回で約200kmの近地点高度の上昇が理論的には可能である。

9) 16時間周期の軌道は、今なお実現可能である。(ただし、軌道傾斜角の変更は無い)

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JAMSAT SCOPE プロジェクトチーム
武安
ja6xkq@jamsat.or.jp
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