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[jamsat-bb:8795] RE: 目的の近地点高度?@AMSAT-bb


今石さん、皆様、

武安/JA6XKQです。少々コメントを。

>  この原文がどこにあるのかと、AMSAT-DL のサイトを探してみたのですが、
>見つけられませんでした。

JAMSATの広報では、毛利さんの翻訳による2月25日の広報

[jamsat-news:1438] AO40に春の兆しが! DB2OSから

に掲載されています。ただし、そこでの数値は200km
ではなく、100kmとなっています。

>個人的には、トータルの加速力に遜色は無くても、時間あたりの加速力が弱
>い (0.1N) アークジェットは、例えば、遠地点付近で1周期ごとに1時間の運
>転を 20周期続けたとしても、トータルで 18.8m/s 程度の加速力にしかならな
>い計算です。それで「initial boost」は 200km 程度しか上げられないのだ、
>と言うことだと思っていますが…。

0.1Nという数値は、件のアークジェット・モータを普通に
(アーク放電で推進剤をプラズマ化する)使ったときの
値であり、今回のコールド・ファイアリングは推進剤で
あるアンモニアだけを噴射するので、異なった推力になる
と思います。

>現状の軌道でも長期間安定して動作すると聞いていますし、オムニアンテナ
>が機能しない現状では、衛星が近地点付近を通過する時間は短い方が適切で、
>その意味では近地点高度を上げる必要性はさほど無いのかな、と思っています。

指摘されている点は判りませんが、別の観点で考慮すべきは
あまり近地点を上げてしまうとマグネトルカーの効きが悪く
なることです。地磁気が強いのは言うまでのなく磁極であり、
軌道傾斜角が大きい初期計画のでは近地点は4,700kmと
いうものでした。現状の数度程度の軌道傾斜角では、地磁気
が計画よりも弱いところを周回しており、近地点高度を
むやみに上げることは、スピンモードでの姿勢変更と3軸制御時
のモーメンタム・ホイールのアンローディング(近着のニューズレター
のホイールの解説を参照してください)に悪影響を与えます。
ちなみに、地磁気の影響力は高度の3乗に逆比例します。

5月25日の広報である「[jamsat-news:1500] AO-40: 姿勢変更の
状況」において、「赤道面という、磁気条件としてマグネトルキング
が難しい条件下で姿勢変更が行われたことを考慮すると、非常に
良好な結果です」という記述があります。

>ただし、「冬眠」中に発生した例の「ひきずり」効果の問題があり、太陽電池
>を展開すればその効果はおそらく大きくなるでしょうから、それを避けるため
>にある程度は近地点高度を上げなくてはならない、と言うところではないでし
>ょうか。

コマンド局が「謎の力(ミステリー・フォース)」と報告したとき、
amsat-bbで大気摩擦(drag=ひきずり)の影響が指摘されました。
大気との摩擦の影響は現状での近地点高度では皆無では
ありませんが、コマンド局としては別の要因であろうと
推測しています。(DB2OSからの私信による)その理由は、
「謎の力」がスピンと同期しているらしいからです。大気との
摩擦であれば、スピンをアップあるいはダウンさせる軸周りの
力としては作用しないからです。うちわを軽く握って走って
見てください。回るのは最初だけで、以後は摩擦最小の位置
で止まります。

で、原因はなんにせよ、姿勢制御を邪魔する「謎の力」を
避けたいという事と、軌道安定に関してマージンを得たいと
いうのが理由のようです。もちろん、大気との摩擦も減ります。

>  200km 云々の原文が探せないので、そのあたり断言はできないのですが、も
>しそうだとしたら、当面の目標をとりあえずそのあたりに置いて様子を見る、
>ということなのかな、と思っています。

「とりあえず様子を見る」という点はそうだと思います。

>  ところで、AMSAT-bb では "burn" (燃焼・焼き)と言う用語についてちょっ
>とした意見交換がありました。その中で KB0ZEV John が、400N モータとアー
>クジェットモータの違いについて、こんな解説をしていました。

手前味噌ですが、広報では考慮済みです。(^_^)v
「点火」とか「燃焼」という表現は用いずに、「噴射」とか
和文にせずに「コールド・ファイアリング(アーク放電を
行わずに燃料だけを噴射)」としています。もっとも、
アンモニアを「燃料」と言った点は不正確ですね。

アークジェット・モータを解説したものとしては、本家のURL
http://www.irs.uni-stuttgart.de/RESEARCH/EL_PROP/ATOS/e_atos.html

4月のシンポジュームで見覚えがあるでしょう?

そして、開発者とDr.MeinzerがAIAA(米国航空宇宙学会)
の論文誌に発表しています。
Messerschmid, E., Zube, D., Meinzer, K., Kurtz, H:
"Arcjet Development for Amateur Radio Satellite",
J. of Spacecraft and Rockets, Vol. 33, No. 1, Jan-Febr. 1996

興味のある方は、コピーを提供します。

「少々のコメント」のつもりが長くなってしまいました。
ごめんなさい。

武安
ja6xkq@jamsat.or.jp