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[jamsat-news:1616] AO-40: 現状報告(2001-11-06)


皆さま、

AO-40コマンドチームの Stacey E. Mills, W4SM から、
近況報告がありました。

(翻訳はJF6BCC/今石さん、TNX)
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S1 帯送信機

先週末、S1 送信機の電源の on/off を繰り返す
テストプログラムをアップロードしました。これは、
電源が on にならない原因が、送信機の制御系
か、それとも S1 送信機自体にあるのかを、確認
するためのものです。このプログラムは1秒毎に
on/off を繰り返し、on の時には S1 送信機が電流
を消費しているかどうかを確認し、もし消費してい
るのであれば on のまま継続するようにセットされ
ました。このプログラムをおよそ 45 分間動作させ、
約 1,350 回の on/off を繰り返しました。しかし、こ
の間、S1 送信機は一度も電流を消費することは
ありませんでした。従って、S1 送信機を回復させる
ことは不可能だと判断すべきです。ただし、コマンド
チームは、今後、トラブルの原因が突然に回復す
る可能性を考えて、この試験を定期的に実施して
いくつもりです。

X 帯送信機

上記の S1 送信機に実施したものと同じテストを、
近日中にソリッドステートの X 帯送信機に実施す
るつもりです。

V 帯送信機

消費電流もあり、温度も上がっていますが、ダウン
リンク信号が確認できません。EME 級の設備を持
つ局による追加の受信試験を行うつもりです。この
試験は、V 帯送信機の何が悪いのかの証拠をつか
むことが可能になるでしょうが、結局のところ、V 帯
の送信機能は失われたように見えます。

衛星の姿勢

現在の姿勢は ALON/ALAT=6/2 で、例の「謎の力」
による影響を排除して衛星の姿勢を維持するため、
これから数周の間、姿勢制御を試みます。その後、
0/0 に戻す予定です。マグネトルキングの作動時間は、
MA 224〜32 から MA 240〜16 へと短縮されます。
高度が高いことから、近地点前後以外では、あまり
効果がありません。

運用スケジュール

2〜3ヶ月前、コマンドチームは RUDAK 運用の後、
S2-MB の送出が再開しない言う問題に出会いま
した。この問題は、RUDAK をIFマトリクスから切り
離すスケジュール処理にともなうほんの数ミリ秒の
遅延の間、S2 送信機に何も信号が供給されず、
そして突然に S2-MBとトランスポンダの帯域が接続
されること(break before make) による、S2 送信機
の AGC の問題であるところまで判明しました。S2
送信機の AGC はこのような急激な変動を想定しな
い設計となっていたため、時折、S2 送信機をロー
パワーモードにしてしまい、その後に再復帰させる
には送信機を off にする必要があったものと思われ
ます。これに対して一時的な解決をはかるために、
RUDAK を off にしてからビーコンを on にするまで
MA 1つ分の間をあける方法を採用し、良好に動作
してきましたが、スケジュールの無駄も発生させて
いました。IHU 内のスケジュール処理を変更して
IF マトリックスの切り替え動作を make before brake
に変更しましたので、この臨時対策は必要がなくなり
ました。

今後実施される予定の、L 帯受信機試験の U 帯
アップリンク無しの L/Sモード、S 帯受信機試験の
S/K モードのテストなどでも、暫定対策無しのスケ
ジュールが採用されます。テレメトリの N ブロックと
AMSAT-BB の周知にご注意ください。

トランスポンダ内で散見される誤解

トランスポンダの帯域内で何度も耳にした、いくつか
の「誤解」について簡潔にコメントします。BB の読者
はこれらについてちゃんと理解していることは確かです
が、もし、実際の運用でこれらに該当するような言動
があれば、その人の誤解を正してやってください!:-)

1. 「あなたの信号はミドル・ビーコンほどには強くない
から大丈夫!」
AO-40のミドル・ビーコンは AO-13 の GB(ジェネラル・
ビーコン) ではありません。ミドル・ビーコンは、皆さん
にとって適正なダウンリンク信号より 10dB も強力に
降りてくる設定です。ミドル・ビーコンに信号強度を
合わせないで下さい。AGC を深く効かせて他局の運用
を困難にするだけです。

2. 「LEILA はどこかおかしいのだろう。そんなに強くない
自分の信号に警告してくる」
LEILA に、ダウンリンク信号があなたのところでどの
程度で聞こえるかと言うことはわかりません。LEILA は
あなたのアップリンクが衛星側でどう聞こえるかを知っ
ているだけです。衛星搭載の U 帯パッチアンテナは、
あなたの信号を良好に受信しているし、衛星の受信機
はとても高感度です。しかし、距離とオフポインティング・
アングル(スクイント・アングル)のせいで、ダウンリンク
は弱くなるかもしれないのです。あなたが過度のアップ
リンクをすれば、LEILA は正しく反応します。S1 帯送信機
が健在でダウンリンク側が支配的要因ではなかった時、
我々は AO-40 がいかに良好に我々の信号を受信して
いたか、実感できていたはずです。

3. 「LEILA は特定の誰かを狙い撃ちしている」
これは誤解と言うよりは、皆さんのしゃべり方に起因する、
音声信号のデューティーサイクルの問題です。LEILA は
動作特性から、CW や SSTV を無視するように見えます。
しかし、AGC はそうではありません。皆さんは出力を低く
保って下さい。特に CW は AO-40 の AGC を大きく動作
させます。必要最低限の低電力での CW に心がけてくだ
さい。オフポインティング・アングルがよい角度にあれば、
1W で十分強力な交信ができるはずです。

4. 「LEILA は、何も信号のないところで警告を出したり
しているが、壊れているのではないか」
LEILA は、信号のないところで警告を出していることがあり
ますが、これは故障ではありません。この現象がなぜ発生
しているのか、まだ完全には確認は取れていませんが、
高出力のレーダー信号がこれを引き起こしているのでは
ないかと思います。ダウンリンク帯が空いているのにも関わ
らず、U 帯の AGC が 9dB 以上になっていることも、よく
あります。

5. 「コマンド局は送信機の出力を落としたのだろう」
送信出力は地上から操作できません。AGCの設定値 も
地上からは制御できません。

6. 「太陽電池パネルが展開されて機能するようになれば、
信号はもっと強力になるだろう」
上記の説明とおり、出力は変わらないので信号が強くなる訳
ではありません。

3軸制御

3軸姿勢制御システムの試験と開発は、予定していた
最終軌道が変わってしまったこと、「謎の力」、そして
いくつかのセンサーが機能を停止したことをカバーする
ために、継続中です。近日中に、更なる試験の実施が
広報されると思いますので期待していてください。衛星
は現在、ソーラー・アングルが適当だった良い「季節」を
終えようとしています。そのため、1ヶ月以内に3軸制御
に移行するか、数ヶ月の間アンテナを地球から外れた
方向に向けるか、いずれかを実施しなくてはならないで
しょう。3軸制御への移行は、スピン制御への復帰を約束
するメカニズムの適切な試験無しには実施できません。

AO-40コマンドチームを代表して
S.E. Mills, W4SM
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2001年11月7日
JAMSAT SCOPE プロジェクトチーム
武安
ja6xkq@jamsat.or.jp