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[jamsat-bb:8643] 対AO-40の手動追尾の可能性@海外移動運用


JF6BCC 今石です。

  ローテータを使用しない「アームストロング」方式による衛星追尾は、手持ち
八木で UO-14 を追いかける場合はともかくとして (^^;)、長楕円軌道をとる AO-40
では、見かけの位置が短時間ではあまり変化しないので、それなりに使い物にな
るはずです。事実、AO-13 時代には、遠地点付近の AO-13 は数時間に渡って空の
一点にありました。
  しかし、AO-40 は残念なことに、当初計画されていた軌道よりも高度が高く、
傾斜角の低い軌道を回ることになり、遠地点付近に AO-40 が居る場合、地球の自
転の方が早くなることから、西方向に1時間あたり 10 度程度、動いて行くこと
になります。そのため、数時間に渡ってアンテナを動かさなくて良い、と言う状
況には、残念ながらなりません。

 さて、AO-40 の本格運用開始の時期に合わせて、グアムやサイパンへの移動運
用を考えている方も少なくないでしょう。外洋船舶をチャーターしてでかけるよ
うな本格的 DX ペディションならともかく、旅客機の預託荷物で機材を運ぶこと
を考えた場合、ローテータや Dish を運び込むのは無理があります。いきおい、
ロングブームの八木系アンテナで「アームストロング制御」(^^;) で、と言うこ
とになるでしょう。
  しかし、衛星通信のためだけに数人のスタッフが付くのであれば別ですが、通
常は単独か、HFの機材&HFの運用グループと一緒に出かけることになると思
います。その場合、衛星機材を操作できる人員は、オペレートする本人一人だけ
(^^;) と言う状況になる可能性は高く(実際、私が過去に3回 KH0 から AO-13
に QRV した時は、4〜11 人のグループでしたが、衛星の運用者は私一人でした)、
運用中に自らアンテナの方位・仰角合わせをできるように考えておく必要があり
ます。

  さて、AO-40 のトラポン動作試験中の実績から、2.4GHz のダウンリンクは、マ
キ電機の 29 エレループ八木シングルでは、SSB での交信には能力不足で、せめ
てあと 3〜6dB は、いやいや DX 局からパイルを受ける身になるのであれば 6〜8dB
は受信を改善するべきだ、と考えています。が、利得のより高いアンテナを使え
ばビーム幅も細くなり、アンテナの方位修正の頻度も高くなってしまいます。
  移動運用先でのアンテナと運用デスクとの位置関係にもよりますが、方位合わ
せがあまり頻繁では大変です。可能なら1時間毎、がんばって 30 分毎がいいと
ころではないかと思います。

  マキのループアンテナのビーム幅について、手元には資料が無いのですが、パ
ラボラの利得とビーム幅の関係式を準用すると、下表のような感じでしょうか。
AO-40 からの電波は円偏波ですから、性能比較は円偏波の利得 dBc で比較すべ
きでしょうね。
  ある時点でアンテナを衛星の方向に向けた場合、次にアンテナ方位の補正が必要
になるのは、衛星がビーム幅の半分の角度を移動した場合ですから、上記の表の
ような時間間隔で、アンテナの方位を修正しなくてはならなくなります。ただし、
方位を合わせる際に、真正面ではなくビーム幅の半分だけ先の位置にズラして補
正するようにすれば、補正の間隔は倍にできるるでしょうから、この考え方で補
正間隔も計算してみます。

                            利得 dBi/dBc  (改善)  ビーム幅 (かかる時間)
  (1) 29 エレシングル        21.0 / 18.0    -       13度      1時間20分
  (2) 29 エレ×2スタック    23.5 / 20.5  (+2.5)    10度      1時間
  (3) 29 エレ×2円偏波化    21.0 / 21.0  (+3.0)    13度      1時間20分
  (4) 57 エレシングル        26.0 / 23.0  (+5.0)     7度       40分
  (5) 57 エレ×2スタック    29.0 / 26.0  (+8.0)     5度       30分
  (6) 57 エレ×2円偏波化    26.0 / 26.0  (+8.0)     7度       40分

  …おや、57 エレ×2でも何とか 30 分間隔になるんですね。このあたりだと
手動追尾は無理かと思ってましたが…。

  もっとも、DX 向けのウィンドゥとなる、AO-40 が東または西の空にある時には、
衛星の移動角度は南中時のそれより少ないでしょうし、遠地点前後の、相対距離
が 50,000Km を切るあたりになれば、衛星のみかけの動きは少なくなります。そ
う考えれば、実際にはアンテナの方位を補正しなくてはならない頻度はさほど多
くならないかも知れませんね。
  個人的には、八木のスタックは、間隔によって発生するサイドローブが地上の
雑音を拾ってしまいますから、スタックよりは、シングル、または2本による円
偏波化の方を採用したいと思います。57 エレ2本の円偏波化がベストでしょうけ
ど…、29 エレ2本の円偏波化、または 57 エレシングルでも十分そうですね。
また、ヘリカルアンテナの S2 帯より、Dish が使われている S1 帯の方が利得
は高いでしょうから、3軸制御が開始され、S1 帯での運用になれば、受信もも
う少し楽になって、29 エレシングルでも十分強くなるかも知れませんし (^^;)。

  アップリンクについては、可能であれば 1.2GHz 帯にしたいところです。435MHz
帯であれば設備も簡単になるし、50W 出せるなら 12〜15 エレシングルで十分な
のですが、パイルアップのことを考えると、欧米のアリゲータ局によって U-Rx
AGC が上がってしまい、ロクにアップリンクができなくなる恐れがありますから
ね。
  とは言えこのあたりは、持参する荷物の量との兼ね合いになりますよね。今ま
での 1.2GHz アップリンクの報告を聞いている限りでは、10W と 17ELE ループ
(17〜19dBi) でもギリギリなようですが、それ以上の設備となると、ちょっと大
掛かりになってきますので。

  なお、自宅の場合は持ち運びの必要がありませんから、Dish が手軽そうです。
90cm 径の Dish で利得は約 25dB、ビーム幅は8度程度になりそうですので、AO-40
受信には能力的に十分、かつ手動追尾も可能になりそうです。
  現在、メッシュで 90cm 径のパラボラをどうやって作るか思案中です。骨の構
造とか、dish やフィードの支持方式とか、悩むところが多々ありますので…。

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Yoshihiro Imaishi 今石良寛 - 福岡県北九州市
JF6BCC, KH2GR (ex. T88J, T88IY, V63BP)
jf6bcc@jarl.com or jf6bcc@jamsat.or.jp
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