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[jamsat-bb:7082] FM衛星用のアンテナ(Re:始めまして-JH6VHO)


JF6BCC 今石です。

At 2001/01/11 02:20:51 JA6DRE wrote:
> 完全な円偏波なら良いのですが、そうではなく位相の乱れの場合は回転
> 方向がクロスYAGIの廻している方向に対して逆になると、それこそ
> 感度が逆方向ではゼロに近くなってしまいますからファラデーローテー
> ションでは直線偏波を傾けるのが都合いい場合が多いのです。

  以前、145MHz の6エレクロス八木を試作して UO-14 へアクセスする
ために移動運用を行なったのですが、そこで地上波で JA6BX 局とつな
がった際に、円偏頗の右旋回と左旋回の切り換えを試してみました。こ
ちらの試作アンテナは、ラジエタの方向を入れかえることで左右が切り
換えられるようにしてあり、JA6BX 江崎さんは右旋回偏波でした。
  円偏波アンテナを使うのは初めてだったのですが、右旋回同士で 59
で届いていた信号が、こちらを左にした途端 53 にまで下がり、円偏波
での旋回方向の重要性を思い知った次第です。散乱や反射等のある地上
波でなければ、全く聞こえないレベルにまで陥ったかも知れません。

  ただし、この辺について神経質になるべきなのは、衛星が円偏波アン
テナを搭載していて、しかも地上局とま正面で対向しているようなケー
スでしょう。アンテナが正対していないと楕円偏頗になりますし、FO-20
/29 は円偏波&スピン制御の衛星ですので話は複雑になります。
 が、UO-14/AO-27/SO-35 などの FM 衛星に話を限るなら、皆マイクロ
サット型の衛星で、搭載アンテナは基本的に単一偏波ですし、姿勢制御
も重力懸垂ブーム…でしたっけ、スピン安定方式ではないので、アンテ
ナは回転していません。
  ですから、FM 衛星の信号は、頻繁に方向の変化する直線(楕円に近い
?)偏波として降ってくる、と考えるとよろしいかと思います。

  このような状態で降りてくる偏波の信号に対して、ループ系のビーム
アンテナがどれほど有効なのかは、私は経験がないのでわかりませんが、
ラジエタが基本的に単一偏波用である限り、単一偏波の八木より多少良
い程度にしかならないのではないか、と思っています。無論、偏波が直
交する位置関係で、八木なら数十 dB は落ちこむところがループなら十
数 dB、と言うことになれば、FM 衛星のダウンリンクは結構強いですか
ら、充分な効果かも知れませんね。

  もちろん、クロス八木などの円偏波アンテナで受信するのも方法です。
が、6エレ八木2本の試作アンテナで実験した限りでは、直線偏波の信
号と円偏波アンテナによる最大 -3dB の利得低下が、元々低利得なため
結構厳しいんですね。結局、受信はそこそこ安定するのだが、図体の割
に利得が無くて、弱いとうまく受信できない、あまりありがたくないア
ンテナになってしまいました。
  加えて、AOS/LOS 前後には、単一偏波アンテナで試した時には観測で
きなかった、数 Hz〜十数 Hz の QSB が発生し、受信能力が著しく阻害
されました。AOS/LOS 前後の仰角が低い場合には、地表近くを電波が通
過することから、色々と特殊な状況が発生するのだろうと思いますが、
なぜ QSB が起きるのかはまだ解析できていません。
  私は自宅では仰角固定の八木アンテナですので、ビームの半値角があ
まり狭い高利得のアンテナは使えません。JAMSAT の Web ページに紹介
されているデータで自作した6エレでは、利得は 10dBi というところ
だと思いますが、これで -3dB で、更に低仰角時の受信状態が悪くなる
となると、あまり意味がないと考え、自宅に円偏波アンテナを設置する
ことは、とりあえず断念しました。

 結局、私が取ったのは、ここの JAMSAT-bb の先輩諸氏がすでに行なっ
ていた、水平と垂直の2本の八木を使って、切り換えると言う方法です。
 単一偏波アンテナで QSB が落ちこむのは、偏波が直交する時が最大で
すが、偏波の違いが 30 度や 45 度程度であれば、まだそれなりの強度
で受信可能です。90 度以上は考える必要がありませんので、最悪となる
直交時の受信をカバーするアンテナが別に用意してあれば、信号強度に
合わせてアンテナを切り換えることで、殆ど QSB の谷間に陥ることを防
げるようになります。また、それぞれのアンテナが動作している時は基
本的に単一偏波ですから、その利得もフルに利用できます。
 JA6DRE さんがHFの八木で試されたように (^^;)、モーターで八木の
ブームを軸にアンテナを回転させる、と言うのが究極の手段だとは思い
ますが、FM 衛星の経験上では、偏波の方向が変化するスピードが結構速
いので、リモートコントロールが追いつかないかも知れません。それに
第一、大掛かりな設備になってしまいますから、それなら最初から仰角
ローテータを用意し、-3dB の利得低下をカバーするだけの高利得の円偏
波アンテナを使った方が楽ですからね。その点、切り換え式なら切り換
えは瞬時です。
  切り換え方式については、当初はアンテナマストにリレーボックスを
置いて、リモートで切り換えることを(ついでに、円偏波への切り換え
回路も一緒に)考えたのですが、うちの場合はシャックから給電点まで
同軸が7mで届くと言う恵まれた(厳しい?)状況なので、同軸を2本
引いてしまい、シャック内で市販の手動の同軸切り換えスイッチを使っ
て、手でパチパチ切り換えながら受信する、と言う、一番安易な手段で
落ちつきました Hi。

 切り換え式ですから、円偏波への改良を考慮しなければ、2本のアン
テナが同一タイプである必要はありません。垂直と水平の2本ですから、
近接して設置(場合によっては同じブームに設置)しても、互いの特性
にはあまり影響が出ません。
 ですから、現在使用している単一偏波のアンテナを、そのままローテ
ータで回るマストに残した上で、4〜8エレ程度の小さな「補助アンテ
ナ」を作り、マストに追加して、別の同軸ケーブルでシャックまで引い
てくる、と言うのが、一番手軽だと思います。

 これが、私が偏波の切り換え式に落ちついた理由です。

  欲を言えば、送信アンテナにも同じことをしたかったのですが、設置
場所の都合で 145MHz の垂直・水平アンテナを2本展開することができず、
145MHz 側は水平偏波のみとなっています。
 UO-14/AO-27 は Mode-J ですから、これは「アップリンクが時々通ら
ない」ことで済み、他人にあまり迷惑はかかりません。が、SO-35 は
Mode-B なので、時々受信ができないことになってしまいます。幸いに
して SO-35 の 2m のダウンリンクは強いので、ホイップアンテナや適
当な垂直系のGPなどを併用することでごまかしてますが… Hi。

 無論、これは FM 衛星相手に限った話です。FO-20/29 や AO-40 は円
偏波アンテナの衛星ですので、やはり、単一偏頗であることがデメリッ
トになるケースがあります。まあ、デメリットを帳消しにできるくらい
に利得の高いアンテナが使えるなら話は早いのですが、限られた設備で
やろうというのですから、あれもこれもは無理ですよね。
  現在使用しているアンテナは FM 衛星用として作ったものですが、そ
れでも FO-29 や AO-10 相手にそこそこ使うことができています。これ
よりいいアンテナは、ルーフタワーと仰角ローテータが買えるくらいに、
フトコロが豊かになってから考えたいと思います Hi。

 なお、移動運用では、アンテナを手で容易に操作できますから、発想
を変えて、アンテナの偏波面を自由に変えられる八木を使うことにしま
した。詳細は私の Web サイトに書いてありますのでご参照下さい。

では。
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Yoshihiro Imaishi 今石良寛 - 福岡県北九州市
JF6BCC, KH2GR (ex. T88J, T88IY, V63BP)
  jf6bcc@jarl.com
  http://plaza16.mbn.or.jp/~palau/
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