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[jamsat-bb:4426] RE: AO-10 spin rate


武安/JA6XKQです。以下、長文で失礼します。

新井さんからご指名ですので、まず用語に
ついて書きます。間違いや不明点ありましたら、
ご指摘ください。

> ニューテンションダンパ、太陽光輻射圧などの用語について
>解説戴けませんでしょうか。

ニューテーション・ダンパ(Nutation Damper)は、コマ(スピン衛星)
の首振り運動を抑制する減衰器のことです。実物は、以下の写真を
ご覧下さい。これはP3Dですが、ここに写っているものは、AO-10
やAO-13に使用されているものと同じものです。

http://www.amsat-dl.org/mvc-020l.jpg

写真の右端に少し湾曲したパイプが写っていますが、これが
ニューテーション・ダンパです。中には液体が封入されています。
ただし、液体が動くように隙間を残し、完全充填ではありません。
ニューテーションで中の液体が揺さぶられますが、このときの
液体とパイプ間の摩擦がニューテーションのエネルギーを
熱エネルギーに変化し、その結果、ニューテーションが減衰
する訳です。ちなみに、P3Dではその数が衛星質量に対応して、
AO-10、-13よりも増えています。

太陽光輻射圧(Solar radiation pressure)は、光子(エネルギーと
運動量を持つ量子としての光)により生じる力です。原理よりも
事例で理解して下さい。(というより、うまい説明が見つかり
ませんでした) 事例としては、マイクロサット・シリーズの衛星
で、巻き尺のベルトで作ったアンテナの表裏を白と黒に塗り分けて
反射率を変え、4本のアンテナを風車ふうに配置することで、
太陽光輻射圧でスピンを掛けたものが身近です。あるいは、
小学校や中学校の理科室にあった、「光にあてると回る、ガラス
に入った風車」は如何でしょう?

>DB2OSは、ニューテーションダンパによる熱が原因ではないか
>と言っています。また、AO-10 unofficial pageのW4SMは、近地点
>で地磁気の影響を受けているのではないかと言っています。

諸説ありますね。どれも、先日書き込んだ要因のひとつです。
どれか一つが作用している訳ではなく、どれが現在の状況では
(あるいは、各季節では、、、あるいは、各MAでは)最も支配的か?
という疑問だと思います。

ニューテーションダンパ説では、エネルギーの移動が非可逆的
なので、スピンレートは低下するばかりで回復することはありません。

ここで疑問に思うのは、スピンのエネルギーとニューテーションの
エネルギーは別もの(直交した次元)だと私は理解しているのですが、
相互のエネルギーが交換されるメカニズムは何なのでしょう?
私の理解自体が誤りですか?

地磁気説では、スピンが低下すればするほど、低下率は
小さくなると思います。衛星が地磁気の磁束を通過すると
渦電流が発生し、渦電流で生じる磁束が地磁気と作用して
力を生じます。しかし、これが回転力になるのは、衛星の
速度に対して、スピンの接線方向速度分だけ進行方向の
左右で磁束を通過する速度に差異が生じ、その差異が
発生する力の差異になるからです。スピンが低下すれば、
この差異は小さくなります。したがって、スピンしていない
場合は、衛星全体に一様に力を生じるため、回転力には
ならないと思います。地磁気説でもスピンレートは低下する
ばかりで回復することはないでしょう。

マグネトルカによるスピンアップ機能が停止した直後の
時期(回転数が大きい時期)には、スピンレート低下に
対して、近地点での地磁気との相互作用力は支配的で
あっただろうと想像できます。

太陽光輻射圧説では、太陽光線の当たり具合が回転軸に
対して不均一であれば、回転力となります。しかも、回転を
増加させる方向にも、低下させる方向にもなります。これは、
坂本さんの解釈があてはまると思います。

前述の磁気力とこの輻射圧の大小関係は定量的には
計算していません。しかし、思うに、当初は磁気力が支配的
要因であり、それによりスピンレートは低下の一途であったが、
スピンレートの低下に伴い磁気力が小さくなり、輻射圧
が支配的になってきて、季節的要因から回転力の大小、
正負変化を生じているのではないか、と。

> もっとAO-10のビーコンデータは無いかとハード
>ディスクの中を探していると、昨年秋のデータが
>幾つかありました。スピン周期を計ってみると、新
>しいことが分かりました。昨年9月14日には84秒
>だったのが段々と速くなり11月21日には63秒になって
>います。それ以降は徐々に遅くなっています。回転
>速度は速くなったり遅くなったりしているようですが、
>こんなことって有り得るのでしょうか??


上述のように、太陽光輻射圧説で説明できると考えて
いるのですが、、、 心強い実測データです。
やはり、何か数値での検証が欲しいですね。勉強中です。

各測定時期での日照条件が判ると相関が出てきて
検証しやすいと思います。あるいは、スピンレート変化
の計算から、サンアングルが逆算できる?

新井さん、UKのコロキウムにペーパーを出されては
如何ですか?

武安
ja6xkq@jamsat.or.jp