Press Release No. 0007 (Copyright 1997 JAMSAT)

次期大型国際衛星 Phase-3D情報

1997年 9月15日

日本アマチュア衛星通信協会(JAMSAT)

 ヨーロッパ宇宙機関(ESA)のアリアン5型ロケットの2号機(試験打ち上げ機)で、本年9月に打ち上げが予定されていた次期大型アマチュア国際協力衛星 Phase-3D 衛星の打ち上げに関する情報です。


緊急情報

「アリアン5型2号機でのPhase-3D衛星の打ち上げは見送り」

JA3GEP/6   毛利幹生

1997年9月7日付の ANS(AMSAT NEWS SERVICE) BULLETIN 250.01に掲載されていた、 Phase-3D衛星打ち上げに関する情報の紹介です。ご理解をお願いします。

7月27日付けのAMSAT NEWS SERVICE Bulletin 208.01 において、ESA(ヨーロッパ宇宙 機関)がアリアン5型ロケットの打ち上げ時に予測される振動に耐えられるよう衛星が 満足するべき仕様を見直したために、Phase-3D衛星の構造体に大掛かりな補強を加える 必要があることが判明し、その結果、Phase-3D衛星を打ち上げてくれるはずだったアリ アン5型2号機(以下、アリアン502と記す)の打ち上げスケジュールとPhase-3Dの準備 スケジュールに不一致が生じたことを報告しました。残念ながらこの状況は変わってお らず、ESAは、Phase-3D衛星はアリアン502には搭載できないであろうと結論づけ ています。このことは、JAMSATニュースレター通巻186号(1997年8月31日発行) でもお伝えしたとおりです。

このANSを見た一部の人たちが、ESAおよびESAの活動についての非常に品位を汚すような 文を、AMSAT-NAのインターネット上での公開メールサービスであるamsat-bbに流しました。 はっきりさせておかなければならないのは、そのようなコメントは、AMSAT-NAあるいは 他のAMSAT組織を代表する意見では全く無い、ということです。さらに重大なのは、 Phase-3D衛星を打ち上げる次の機会を何とか確保しようとして現在も続いている努力に 対し、そのような心無い発言は致命的なものとなりうる、ということです。

 

ここで思い出して、改めてESAに感謝をしてほしいのですが、この20年間以上にわたって 、ESAはAMSATの活動を支援し続けてきてくれました。1980年、Phase-3の最初の衛星は アリアンロケット2号機に搭載されましたが、残念ながら打ち上げは失敗し、衛星は 大西洋に沈みました。しかし、ESAはこの損失を埋め合わせるべく、3年後にはAO-10を 打ち上げてくれたのです。その後、1988年のAO-13、1990年の4個の Microsat と2個の UoSat 、さらに KO-23、 KO-25、 IO-26 そして AO-27を打ち上げてくれました。 ロシアと日本が打ち上げた衛星を除けば、1980年代の初期から、寿命が長いアマチュア 衛星のすべてをESAが打ち上げてきたことは、明白な事実です。

  ESAがAMSATのプロジェクトを支援してくれなくなった、などと考える理由は全くありま せん。今回のPhase-3D衛星に関する決定は、スケジュールが合わなくなったと言うだけ の理由によるものであることは、明白です。だれもがお分かりだと思いますが、アリア ン502がうまく打ち上がることは、ESAにとって非常に重要なことです。それも可能な限 り、立てられたスケジュールにしたがって打ち上げられねばなりません。言うまでもな いことですが、たとえPhase-3D衛星が載っていなくても、アリアン502の打ち上げが成功することは、 AMSAT のもっとも関心を寄せているところでもあります。

  8月30日(土曜日)、フロリダ州オーランドにあるPhase-3D衛星の組み立て ラボにおいて、Phase-3D運用理事会(プログラムボード)のミーティング が開催されました。その席でも、 情勢を心配する声が出ました。その会議の出席者は、AMSAT-DL(ドイツ)会長でPhase- 3Dプロジェクトリーダである DJ4ZC カール・マインツァー博士(Dr.Karl Meinzer)、 AMSAT-DL副会長の DJ5KQ ウェーナー・ハス(Werner Haas)、コマンド局を代表して  DB2OS ピーター・グェルゾ(Peter Guelzow)、AMSAT-UK(英国)事務局の G3AAJ ロン・ブロードベント(Ron Broadbent), ARRL代表の W5ZN ジョエル・ハリス(Joel Harrison)、AMSAT-NA(アメリカ)副会長の KB1SF キース・ベーカー(Keith Baker)、 そして AMSAT-NA会長の W3XO ビル・タイナン(Bill Tynan)でした。この運用理事会 という組織は、Phase-3D衛星が無事に打ち上がり、試験が終了した暁に、Phase-3D衛星 の広範な運用方針を決定するための協議体です。会議では、 打ち上げについての状況を再検討することに加えて、会議では、運用理事会( プログラムボード)の勧告をコマンド局チームに通達するための機構と、 衛星の現状についても議論されました。 討議されました。先に述べたような構造体の改造作業は、予測されたことでは ありますが、スケジュールに大きな影響を与えています。 例えば、電気系の試験とドリルでの穴あけやリベット打ちといった構造体 の改造作業とを同時に進行させるために、沢山ある電気系の搭載モジュール を幾度か取付けたり外したりしなければなりませんでした。 ご存知のように、これらには大変な時間がかかります。それにもかかわらず、 この機構部分の改造作業も、近いうちに完了するだろうと会議で報告されました。 構造体の改造作業は、スケジュールに遅れを生じただけでなく、 費用的にも、これまで考えられていたよりもさらに $25,000 (約300万円) 以上よけいに出費がかさむことが予測されています。

 オーランドのPhase-3D衛星組み立てラボでは、機構部分の改造 以外の作業も進んでいます。ドイツ、ベルギー、チェコ、スロベニア、そして日本から 駆けつけたエンジニアたちが延べ2週間にわたって滞在し、電気系の組み立て作業を進 めました。その直前には、RUDAKチームが来ていて、この非常に興味深く重要なRUDAKシ ステムの組み込みと試験を行いました。

 Phase-3D運用理事会からの、皆さんへのお願いです。我々が今 しなければならないことは、Phase-3D衛星を成功裏に打上げるために役立つことです。 amsat-bbのような公開の場への意見の公表、いろいろな雑誌の編集者への投稿などには、 とくに繊細な配慮が必要です。Phase-3Dプロジェクト・リーダでAMSAT-DL会長のDJ4ZC カール・マインツァーは、今もESAの代表者と粘り強い交渉を続けています。それを ぶち壊しにする恐れのあるようなことは、たとえどんなことであっても、絶対にしない よう、お願いします。

今後もANSに注目しておいて下さい。


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