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[jamsat-news:677] AR-502 launched on Oct30


Ariane5型2号機が10月30日、無事打ち上げられました。

このAR-502には、当初Phase-3Dが搭載される予定でしたが、諸般の
事情と判断で、搭載が見送られた経緯があり、多くの方が関心をお
持ちと思います。

ESAの発表によりますと、アリアン5型2号機AR-502は、予定より数分
遅れの10月30日の1343UTC(日本時間30日22時43分)に、フランス領
ギニアのクールーから打ち上げられ、地球周回軌道への模擬衛星の
投入に成功しました。

今回Phase-3Dは搭載されていませんでしたが、この非常に重要なテ
スト飛行の成果を生かし、今後のプログラムが順調に進展し、Phase
-3Dの早期の打ち上げにつながることを期待したいと思います。

以下は、amsat-bbなどに流れた情報を基に、私なりに解釈した結果
です。状況理解の御参考になれば幸いです。

AR-502の目的は、従来のAriane4型機の2倍の能力を持つべく設計さ
れたAriane5型の性能を確認するためのもので、商用ロケットとして
重要な、GTO(Geo Transfer Orbit 遠地点が36,000kmの楕円形である、
静止軌道への遷移軌道)への衛星投入能力を証明することでした。

昨年6月に打ち上げられた1号機AR-501は、ソフトウエアの問題から
主ロケットの方位制御に異常が生じ、発射直後に爆破されたため、
静止軌道遷移軌道への投入も、2段目ロケットのテストも未了だった
ため、それらの評価もかねていました。

今回の打ち上げの結果、固体ブースター・主エンジン・2段目も作動
し、近地点524km、遠地点27,000kmの楕円軌道へ、測定プラットフォ
ームおよび模擬衛星を投入することが出来ました。近地点は計画値
524kmに一致しましたが、遠地点は計画値36,000kmと比較し、9,000
kmも低い結果でした。

フランスのル・モンド紙によれば、これは、主エンジンのローリン
グが激しく、予定より10-20秒も早くシャットダウンしたために、
1段目の速度が計画より200m/secも不足し、2段目のロケットによって、
その不足分を取り戻すことが出来なかったためと言われています。

もし商用として静止衛星を打ち上げていたとすると、この遠地点の
不足に対しては、衛星本体側で位置制御用ロケットを噴射させて、
所定の軌道へ移動することは可能です。しかし、そのために燃料を
消費するため、静止衛星の寿命が短くなり、今回の不足は、10%の短
縮になります。商業打ち上げなら、「部分的な成功」ということに
なります。

今回Phase-3Dは、搭載されていませんでした。もし搭載されていた
とすると、主2液式400Nモータを240秒、ただでさえ不足している燃
料の、約6分の1を消費しなければなりません。その際には、当初計
画とは異なる最終軌道を決定し、そこへPhase-3Dを移すことになっ
たでしょう。

AR-502の主エンジンのローリングの問題は、打ち上げが9月から10月
へ延期された理由の大きな一つで、シミュレーションでの評価結果
より、実際には影響が大きかったとも考えられます。

今回の打ち上げ結果は、もちろん精密に分析され、改良や確認がな
され、来年春以降に予定されている次回の打ち上げ、AR-503に反映
されると思われます。

Phase-3Dをどのように打ち上げるかについての新しい情報はありま
せんが、今回の結果の分析に基づき、次回の打ち上げの目的が明確
にされ、「何を搭載するか」を含めた新しい計画が、ESAおよび関係
機関で決定されていくのではないでしょうか。その際に、もちろん
Phase-3Dをどうするかも、相談されるのでしょう。

以上は、私の個人的な感想です。公式情報は、JAMSAT News Letter
あるいはjmasat-bbでの続報に御注目下さい。

なお、打ち上げの写真、動画などが
 "www.flatoday.com/space/today/i4thur.htm" 
にあります。関心のある方は、ぜひ、ご覧ください。

73 and Good DX!           JA3GEP/6    毛利
/eGO FWINBG