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[jamsat-bb:14869] AO-40 Update, 2004-02-03


JJ1WTK 坂本です

 通信途絶の状態にある AO-40のリカバリ作業について、W4SM Stacey が
amsat-bbに流していた 'AO-40 Update, 2004-02-03' を紹介します。

 管制チームは、急速に進んだAO-40の主バッテリの劣化が、実は、打ち上げ後
の2000年12月に起こった400Nキックモーターのアクシデントに遠因があり、
実はその時点で、すでに主バッテリの一部が損傷を受けていたと考えています。

 この広報文中で説明されているバッテリの取り付け状況については、
AMSAT-NAのWebサイトにあるフォトギャラリーの写真が参考になるでしょう。
ただし、この写真はPhase3Dの組み立て中での写真なので、打ち上げられた
最終的な状態とは多少異なるかもしれません。
http://www.amsat.org/amsat/features/p3dpix2/pics-p3d.html
特に、この写真がわかりやすいです。
http://www.amsat.org/amsat/features/p3dpix2/photo4.jpg
中央に1個、その周囲に6個のタンクがあり、タンクを仕切っている
間仕切りの壁に、電池パックが取り付けられています。
3時方向の電池パックが、文中では 1/6と書かれているもの、11時と
7時方向のものが2/3と4/5のどちらかでしょう。1時と5時方向の
位置にある各10個のものは、今後のAO-40の生命線になる補助バッテリです。

ヒートパイプについては、この写真がわかりやすいでしょう。
六角形に曲げられた細いパイプが4本見えますが、これがヒートパイプです。
ftp://ftp.amsat.org/amsat/satinfo/phase3d/sfk_hp.gif

今回も、長くなるので原文は省略しますが、原文のヘッダーは次の通りです。

----------------------- Original Message -----------------------
 From:    "Stacey E. Mills" <w4sm@AMSAT.Org>
 To:      amsat-bb@AMSAT.Org (Amsat Bulletin Board)
 Date:    Mon, 02 Feb 2004 21:59:04 -0500
 Subject: [amsat-bb:74903] AO-40 Update, 2004-02-03
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 AO-40のコマンドチームは、毎オービットごとに、シンプルな機械的コードを
AO-40に向けて送信し、主バッテリをOFFに、補助バッテリをONに、それからS2送
信器をONにするよう試みる体制を整えました。これに続いて、すべての送信機を
OFFにするコマンドもAO-40に向けて送信されます。これは、低電圧から送信機を
保護するためです。
 もし、主バスの電圧が10V前後あれば、それらのコマンドは機能するはずです。
ただし、S2送信器は20V以下の電圧でも動作するようには設計されていないので、
動作しません。
 バッテリーリレーについて、AMSATラボにある同じ型のリレーでテストを行っ
たところ、12Vあれば確実に動作しましたが、それ以下の電圧では動作しません
でした。もし、AO-40のバス電圧が10V以下であれば、IHU-1とコマンド受信機の
どちらかあるいは双方ともが動作しないので、コマンドは受信されないでしょう。
どちらにしても、現在のIHU-1では、IPSが動作していないので、機械的コードの
コマンドは、リセットモードでしか機能しません。我々は、現在のAO-40のバス
電圧は12V以下であり、IHU-1とリレーの両方が動作していない(10V以下の場合)、
あるいはIHU-1は動作しているがリレーは動作していない(12V以下の場合)と考
えていますが、リレーが切り替われば主バッテリが切り離されて、現在の状況か
ら抜け出せるはずです。

 AO-40の姿勢とスピンについてですが、これに関しては長期間に渡って心配す
る必要はありません。現在のスピンレートは 3.5 RPMで、この時間変化率は極め
て小さい値ですので、スピンレートが 3.0 RPMに落ちるまでに約4年かかるでしょ
う。また、スピンレートが最低1.5 RPMあれば、マグネトルキングが掛かります。
そのため、いわゆる「謎の力」によってALONは 11.5°/週の割合で減少します。
一方、ALATは、「謎の力」の影響をほとんと受けず、オービットごとに僅かずつ
変化する程度です。

主バッテリについて(及び推測):
 主バッテリは、3つのパックに分けられ、それぞれアルミニウムの板で作られ
たケースの中に収められて、1パックずつ間仕切り補強板にボルト留めしてあり
ます。間仕切り補強板とは、パネル1と6の間(以下では1/6と書きます)、2/3、
4/5の補強板です。パックを構成する電池セルは金属製の端子にネジ留めしてあっ
て、各端子間を厚い金属製のU字型ストラップで直列に接続してあります。
(訳者注:主バッテリは全部で20個のセルを直列接続してあるようです)

 2/3の場所にあるパックには7つのセルが含まれており、直列接続のいちばん負
極側にあたります。1/6の場所にあるパックには6つのセルが含まれており、直
列接続の中間にあたります。そして、4/5の場所にあるパックは7つのセルが含
まれており、もっとも正極側にあたります。1/6のパックは、ヒートパイプのサー
ミスター(訳者注:温度センサーの一種)にもっとも接近したパックであり、そ
のヒートパイプは衛星のオムニ面に近くて、底に近いところに位置しています。
4/5と1/6のパックに取り付けられたサーミスターは400Nキックモータのアクシデ
ントの時に故障しました。この故障が、バッテリそのものの損傷のためなのか、
あるいは(サーミスターの)配線に異常が起こったためなのかはわかっていませ
ん。もし、1/6のパックが GNDに短絡を起こしたら、その箇所の負極側が0Vに引
き下げられることになります。パック2/3の場合も同様です。パック4/5の場合は、
短絡の箇所とセルの状態によりますが主バスの電圧が正常値の半分(14V)あるい
は10V、あるいはそれ以下に引き下げてしまうことになるでしょう。

 ここからは推測の話ですが、この箇所で短絡が起これば、局所的な発熱(ある
いは高温の金属の噴出)が起こるでしょうし、ヒートパイプ(訳者注:おそらく、
正しくはセルのことだと思われます)のサーミスター、またはその配線にダメー
ジを与えることも考えられます。

 この仮説と辻褄の合わない事実もあります。サーミスターが最後まで生きてい
たパック2/3の温度は、電圧低下の後でも温度上昇を示していません。このパッ
クにどれだけの容量が残っていたかはわかりませんが、ほとんど残っていなかっ
たという可能性はあります。(推測はここまで)

 何人かが指摘したように、我々は主バッテリのセルの一つがオープンになって
くれるのを待っています。

 AO-40コマンドチームを代表して  W4SM

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  Stacey E. Mills, W4SM    WWW:    http://www.keplerian.com
   Charlottesville, VA     PGP key: http://www.keplerian.com/key
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--------------------- Original Message Ends --------------------



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