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[jamsat-bb:11292] パケットUIフレーム解説-ISS交信のための


JF6BCC 今石です。

 最近はパケット通信も下火で、昔は熱中していたんだけど最近はご無沙汰、
ISS で 1200bps/FSK のパケットが使えると聞いたので、押入れの中から古い
TNC をひっぱり出してセットアップ、と言う方もいらっしゃるかと思います。
  TNC の操作コマンドについては、押入れからマニュアルがちゃんとみつかる
ことをお祈りします (^^;) が、ここでは ISS での交信に使われる UI フレー
ムと言うパケットについて、簡単に解説します。

# 参考資料:CQ出版社 1991 年版「パケット通信ハンドブック」

  AX.25 による UI フレームのパケットは、このような構造をしています。

  ※エンターキーを押すと出るキャリッジリターン (CR) 符号を、ここでは
    '*' で表示します。また、スペースは '_' で表示します。

例 : JF6BCC>CQ,RS0ISS* <UI R>:CQ
パケット長 33 バイト
+---+----------+----------+----------+------+-----+------+-----+---+
| F |            アドレス            | 制御 | PID | 情報 | FCS | F |
|   | JF6BCC-0 | CQ____-0 | RS0ISS-0 |      | OxF0| CQ*  |     |   |
|(1)|   (8)    |   (8)    |   (8)    |  (1) | (1) | (3)  | (2) |(1)|
+---+----------+----------+----------+------+-----+------+-----+---+

F    : フラグ。"01111110" (Ox7E) で、このビット列から後がデータである
       ことを示す。
制御 : パケットの種類と順序を示す。UI の場合は Ox03 または Ox13。
PID  : 予約領域で現在は OxF0 固定。

  1200bps/FSK の信号では、150 バイト/秒程度の伝送速度となりますので、
34 バイトを送るのに 227ms かかることになります。実際は、パケットの前
に SYNC 信号が TXDelay 分、またパケットの後にも送信が切れるまでの時間
がありますので、TXD=50 とすると、34 バイトのパケットを1個送出するの
にかかる時間は 800ms 程度になります。

  さて、上の図で気づくことが2つあると思います。ひとつ目は、アドレス
フィールド、つまり、自コールサイン、あて先、デジルートを格納する領域
は8バイト単位で増えるのに対して、情報部分は1バイト単位で増えること
です。ふたつ目は、あて先に6字以下の情報を入れても、残りはスペースで
埋められてしまう、と言うことです。
  ISS を使った交信では、1回のパスで最大 10 分しかチャンスが無いこと、
送受信ともに 2m 帯を使った半二重通信であること、地上局同士は互いにセ
ンシングできないため、すべて「隠れ端末」として、アップリンク周波数で
のパケットの衝突を引き起こすこと、などの問題がありますので、効率よく
公平に運用するためには、送信回数を減らすとともに、1回の送信は極力短
くすべきです。

  となれば、このパケットの特質を生かして工夫してはどうでしょうか。つ
まり、あて先の6文字をフルに使って情報領域を節約するとともに、無駄な
デジルートは極力使用しない、と言うことです。

  試しに、CQ と応答のケースで比較してみましょう。

1. CQ の場合。

  (1)  JF6BCC>CQ,RS0ISS* <UI R>:
       +-+--------+--------+--------+-+-+-+--+-+
       |F|JF6BCC-0|CQ____-0|RS0ISS-0|C|P|*|FC|F|  31 バイト
       +-+--------+--------+--------+-+-+-+--+-+
  (2)  JF6BCC>ALL,RS0ISS* <UI R>:CQ
       +-+--------+--------+--------+-+-+---+--+-+
       |F|JF6BCC-0|ALL___-0|RS0ISS-0|C|P|CQ*|FC|F|  33 バイト
       +-+--------+--------+--------+-+-+---+--+-+

2. レポート交換の場合

  (3)  JF6BCC>JA6PL,RS0ISS* <UI R>:599
       +-+--------+--------+--------+-+-+----+--+-+
       |F|JF6BCC-0|JA6PL_-0|RS0ISS-0|C|P|599*|FC|F|  34 バイト
       +-+--------+--------+--------+-+-+----+--+-+
  (4)  JF6BCC>JA6PL,RS0ISS* <UI R>:UR 599
       +-+--------+--------+--------+-+-+-------+--+-+
       |F|JF6BCC-0|JA6PL_-0|RS0ISS-0|C|P|UR 599*|FC|F|  37 バイト
       +-+--------+--------+--------+-+-+-------+--+-+
  (5)  JF6BCC>CQ,RS0ISS* <UI R>:JA6PL UR 599
       +-+--------+--------+--------+-+-+-------------+--+-+
       |F|JF6BCC-0|CQ____-0|RS0ISS-0|C|P|JA6PL UR 599*|FC|F| 43 バイト
       +-+--------+--------+--------+-+-+-------------+--+-+
  (6)  JF6BCC>JA6PL,RS0ISS*,UR,599 <UI R>:
       +-+--------+--------+--------+--------+--------+-+-+-+--+-+
       |F|JF6BCC-0|JA6PL_-0|RS0ISS-0|UR____-0|599___-0|C|P|*|FC|F| 47 バイト
       +-+--------+--------+--------+--------+--------+-+-+-+--+-+

  いかがでしょうか? (^^)。いずれが効率が良いか、一目瞭然ですよね。
実際に ISS から降ってくるパケットを聞いていても、長さの違いがわかる
のではないでしょうか?。
  無論、数バイト〜数十バイトの節約で搾り出せる時間は、たかだか 10〜
100ms と言う短い時間でしかありません。が、わずか 100ms 短くなったお
かげで、パケットが破損せずに通ったり、つぶし合うことを避けられたり
するかも知れないのです。

  私は基本的に、(1) と (3) の形を取っています。UI の書き換え作業が
多少面倒ではありますが、(5) と (3) の差を考えると、混信防止のために
努力する価値は十分あると思います。
  削りすぎた交信は無味乾燥だ、と思われる方もいらっしゃると思います
が、別に、四六時中これをしなくてはならない訳ではありません (^^;)。
混雑していない時なら、簡単なメッセージを交換したとしても、誰も文句
は言わないと思いますよ。あくまで、混信でパケットが破損するのを防止
するため、かつ、混雑した状況下で効率よく交信をするための「工夫」な
のです。

  ISS 経由で UI チャットを楽しまれている各位へ、参考となれば幸いで
す。

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Yoshihiro Imaishi 今石良寛 - 福岡県北九州市
JF6BCC/KH2GR
mailto:jf6bcc@jarl.com  
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