FMリピータ衛星に挑戦
JAMSAT
日本アマチュア衛星通信協会

FO-29衛星のデジトーカを受信できるようになったら、FMリピータ衛星の受信と、初めての衛星通信に挑戦してみましょう。 IARU のFMリピータ衛星の運用ガイドラインを末尾に添えました。 /JAMSAT


簡単!衛星通信 FM系
7K4iiN 中島 昌一/JO2OXL 落合卓史


FM衛星?
FMで利用できる衛星があるのをご存じですか?FMで音声を中継する衛星は”FMリピータ衛星”とも呼ばれ、衛星通信の入門にはもってこいの衛星です.というのは、FMを使っているので周波数が少しくらいずれていても問題にならないし、音質がよく、聞きやすいからです.また、ハンディ機でも使えるほど簡単なんです.

衛星の中継器をFM音声の中継に利用した歴史は比較的浅いです.日本では1997年4月にバンドプランが変更されるまで、衛星通信用周波数帯でF3で送信することが禁止されていたほどです.

しかし、現在では、F3の送信が許可され、FM系の衛星を使うことが出来るようになりました.FM系衛星を使った衛星通信はもはや主要な位置を占めていると言えるでしょう.人気もあります.

この種の衛星は”宇宙のFMレピータ”と言えます。地上のレピータと同様、遠距離とつなげてくれるのですが規模が違います.近隣諸国くらい楽々です.

ここでは、FM系の衛星を「聞いてみる」そして「交信してみる」ノウハウをズバリご紹介します.

受信してみよう−受信編

何が聞こえるのでしょうか?
衛星「ふじ3号」のデジトーカを受信して衛星通信の練習をしたあとは、いろいろな衛星の受信と、そして、衛星を使った交信に挑戦してみましょう.

衛星「ふじ3号」FO-29号のデジトーカとは違い、「私が衛星です」のようなメッセージは聞こえません.聞こえてくるのは直接、地上同士の交信や、運が良ければ「CQサテライト」というメッセージです.

始めのうちは、聞こえているのか聞こえていないのかよくわからないので、すぐに受信周波数を高くしたり低くしたりいじってしまいます.コツは調べておいた受信周波数をあまり変えない事です.調節する範囲は大きくて上下10kHz(0.01MHz)せいぜい5kHz(0.005MHz)です.グランドプレーンアンテナなどで受信してみる時は、衛星が送信している周波数を受信するように周波数をセットして、聞こえてくるのをただただ待ちましょう.また、受信機のスケルチは解放にしておき,ザーザー言わせながら待機しましょう. 気長に聞こえてくるのを待つのもコツの一つです.

衛星の受信周波数では、韓国語や中国語、タイの言葉、とにかく日本語以外の言語が聞こえる事があります.衛星が高い所を飛んでいるのでアジアの国々でアップリンク周波数で交信している電波を中継してしまうのです.日本語でも遠くの局同士が交信しているのが聞こえてしまいます.慣れてきたら、いろいろな音が聞こえてくる中から「CQサテライト」や「CQ」の声を探しましょう.そして、各局の交信の様子を聞いてみましょう.

どんなアンテナを使いましょうか
とりあえず聞いてみるのならば、グランドプレーンアンテナやハンディ無線機の付属アンテナなどでもよいかもしれません.でも、飛び回る衛星を追いかけてみる方が楽しいので、八木アンテナを使ってみましょう.

八木アンテナはエレメントの数が多くて、全長が長いほど性能が良いのですが、ここでお薦めは3〜9エレメントの八木アンテナです.ここで紹介する衛星は10分間から20分間で上空を通過して行きます.通過中に続けてアンテナを手に持って衛星に向けるには、小さくて軽いのがいいでしょう.私は430MHz帯用に5エレメントが使いやすくて気にいっています.また、性能の良いアンテナは正確に衛星に向ければ強力に受信できますが、向けるのは少し難しいでしょう.

八木アンテナを使って衛星を探すにはアンテナを上下左右いろいろな方向へ向けなければなりません. まず、自分を中心にどの方角に何が見えるのか景色を覚えましょう. そこで、アンテナを手に持つわけですが、方角を探す時は体ごと、アンテナと一緒の方角を向くようにしましょう. さっき覚えた景色と方角が、調べておいた時間と方角と合っているのかを確かめていきましょう.

FO-29と同じようにアンテナのエレメントを水平にしたり、垂直にしたり、回したりしてみましょう.どの方向、どんな角度で衛星からの信号が強く受信できるのか調べてみましょう. 実際に受信テストしてみると、表のようになりました.

太平洋上空(日本の東側)を通過する時の受信アンテナの傾きと周波数の例
衛星の名前見えはじめ東がわ上空沈む前
AO-27||---
436.80436.795436.785
UO-14|---
435.08435.07436.065
FO-29???
435.915435.91435.905
| :垂直、---:水平、/:斜め、数字は受信周波数
5エレメント八木アンテナを手で持ち、ハンディトランシーバC-501を使って受信しながら衛星の位置と偏波面を探す.

エレメントは水平になったり垂直になったり斜めになったりすることがわかりますね.アンテナのエレメントが横の時は衛星から水平偏波(すいへいへんぱ)という状態で電波が届いています.縱は垂直偏波(すいちょくへんぱ)ですね.他にも円偏波(右回りと左回り)があります.水平とか垂直など偏波面(へんぱめん)と呼ぶ事もあります.

こういう実験をしてみると、どうやらAO-27やUO-14を使うには垂直偏波にした方がきれいに聞こえるチャンスが多いと思いました.皆さんの結果はいかがでしたか.

以前は衛星通信と言えばターンスタイルアンテナやクロス八木アンテナに代表される円偏波アンテナでした.そういえば、テレビのBS放送のパラボラは、円偏波の電波受信用になっています. 衛星の利用方法や目的、衛星のアンテナの形や構造、宇宙での姿勢を調べていくと理解できます.

ここで決めた430MHz帯用5〜8エレメント八木の垂直偏波といえば「小ヤギ」などど洒落で謙遜して使っている方が多いと思います.どうせなら、30度上向けて衛星を聞いてみて下さい.

アンテナを手に持って交信するならば偏波面は自由に変えられます.棒(マスト)にくくりつけて使う場合は、エレメントが垂直になるようにした方がよさそうです.


交信してみよう−QSO編

衛星からの電波(ダウンリンク)は聞こえましたか?ワッチに成功したらいよいよ衛星に向けて送信(アップリンク)してみましょう.

どうやるの?
衛星通信は多くの場合、衛星からの電波を受信しながら衛星に向けて送信します.送受信同時に行うというわけです.自分で送信しているときは、衛星までちゃんと電波が届いているかを確認しながらやるわけですね.無線機はハンディタイプでも出来ます.その場合は周波数ステップを最小にしましょう.無線機は430MHz用と145MHz用に2台用意してください.衛星通信対応型の無線機が用意できれば理想的です.

アンテナは?
高性能であるに越したことはないのですが、それほど大がかりなものは必要ありません.20W以上の大出力が出せればモービルホイップでも可能です.ハンディ機で5Wの場合は、八木アンテナなら少なくとも5エレメントはほしいものです.

むやみにアンテナの利得を上げるのも考え物です.より正確に衛星に向ける必要があるからです.高利得アンテナの場合、上下方向にも調節できる仰角ローテータも付けるなど”土台”もしっかりしましょう.

FM衛星のデータ
現在、FMレピータを運用している衛星には次の3つがあります.

衛星名 アップリンク
(送信)
ダウンリンク
(受信)
備考
UO-14145.925MHz435.070MHzFMレピータ.夜間も作動.
AO-27145.850MHz436.795MHzFMレピータ.昼間のみ作動.
SO-35(436.291MHz)(145.825MHz) 人気絶頂FMレピータ.いつも運用しているわけではない.周波数は変更されることがある.
周波数、運用予定は
<http://sunsat.ee.sun.ac.za/ham1.htm>
JAMSATのSUNSATミラーサイト
時刻は協定世界時(UTC)表記です。


本番です!
さて、設備も整ったので実際に波を出してみましょう.

衛星が地上に現れて、衛星からの電波は受信できましたか?よーく聞いてみましょう.CQを探すのです.聞こえましたか?

呼んでみましょう!その時はただ単に自分のコールサインを言うのではなく、必ず「(相手局のコールサイン) こちらは (自局のコールサイン)」という形式で呼びましょう.というのは多くの局が出ている場合に誰を呼んでいるかわからず、混乱するからです.

レポートは衛星からの信号をレポートしましょう.衛星の信号が59だったら「59です.」と送ります.

注意;「届いているかな?」と試しに「ワンツー」とか「テスト、テスト」と言って送信するのは止めましょう.あなたには衛星からの返信が返ってこなくても、他の人には聞こえていたりします.後で「誰だろう、テストって言ってた人」と話題になります.コールサインが聞こえれば助けてあげる事ができます.どうしても衛星テスト
してみたい時はコールサインを送信しましょう.

(参考) それぞれの衛星に特徴があります.この表は私が実際にハンディ機でテストした結果です.アンテナはともに送信が5エレメント八木、受信が8エレメント八木で、ハンディ機は送受信ともDJ-F52で出力は5Wです.
衛星 アップリンク
のしやすさ
最大受信強度その他
UO-1457海外局もアクティブ.
AO-2755 衛星が北を飛んでいるときの方がダウンリンク
は強い.アップリンクしやすい.
SO-3559 QRM(混信)が激しくアップリンクは難しいが多
くの局が出ていておもしろい. ダウンリンクは
強力.


どうでした?衛星まで電波が届きましたか?本来ならもっと弱い電波でも衛星まで届くのですが、そうはいかない現実があります.

もし、アップリンク周波数で交信している局がいたらどうなるでしょうか?アップリンク周波数を使って地上波で交信する、すなわち衛星を使う目的でないで交信するのは違法行為です.しかし、衛星からは広い範囲が見えています.そんな中にはこのような局がいる場合があります.アップリンク周波数で交信していますので当然この電波は衛星まで届きます.この電波が我々の電波を邪魔するわけです.こういう局は衛星からの信号を聞いていなく、遠くにいることが多いので送信を止めさせることも出来ません.衛星まで電波を届かせるにはこれらの局に勝るような強さが必要になるわけです.

もし、うまくいかなかった方は送信電力かアンテナ利得が足りないのかも知れません.でもあきらめないでください.前に書いたように多くの場合、アップリンク周波数で交信している局に邪魔されているのです.しかし、それらの局が送信を止めると衛星に電波が届く(アップリンクできる)かも知れません.また、衛星の姿勢やアンテナの向け方など様々な要因が重なってアップリンクできるかも知れないのです.1度だけやって”あぁ、やっぱこれじゃ駄目だ”というのは早すぎます.あきらめないで何度も挑戦する、こういう姿勢が大事です.そうしているうちに”コツ”が見えてきます.

AO-27による交信 : JA0FKM/1 -AO27-> (RS 58) 7K4IIN(録音)
2分35秒 14.4Kra(154KB) by 7K4IIN
AO-27による交信 : 7k4IIN -AO27-> (RS 41) JA0FKM/1(録音)
2分45秒 14.4Kra(162KB) by JA0FKM/1

衛星通信のコツ?
何でもコツがあります.衛星通信にもコツがあります.特に出力の小さいQRP局などいわば厳しい環境にある方は参考にされるといいかと思います.
  • 太平洋上の衛星をねらおう!
    衛星が太平洋上にあるときはアップリンクしやすいです.これは、太平洋上にはアップリンク周波数で交信している局がいないからです.水平線に近い高度5度を通過する衛星でも良好にアップリンクできます.0.3Wでアップリンクできたこともあります.逆に頭の真上や西側を通過する衛星には比較的アップリンクしにくいです.

  • 昼間より夜間、平日より休日
    アップリンク周波数で交信している局は一般に平日昼間に多く出ています.よって、それが少ない夜間や休日をねらうと比較的アップリンクしやすいです.年末年始も好調のようです.

  • コンディションの変化をつかもう!
    衛星は高速に飛行し、姿勢が絶えず変化しているのでコンディションの変化が大きいです.衛星のアンテナの向きが変わったり、太陽電池の向きで発電量が変わり、受信や送信で電力が不足したり、などなど.QRPでアップリンクできるときもあれば、50Wでも厳しいときもあります.QRPでQSOを達成するにはコンディションが上がった時を素早くつかみ、コールサインやレポートを送りましょう.すると、必要最小限ながらQSOは成功します.
QSLカードを書こう!
QSLカードはQSOを証明する大切なものです.衛星アワードを狙っている局もあるのでなるべく発行するようにしましょう.しかし、下手をすると無効QSLになってしまうかも知れません.衛星の場合は少し特殊なので注意しましょう.
  • 周波数はアップリンクとダウンリンク両方書く
    「145.975MHz↑、435.070MHz↓」や「145/435」のようにアップダウンの区別が付くように書きましょう.

  • 衛星名を書く
    QSOに使った衛星の名前を書きます.備考欄などに「viaUO-14」のように書けばいいでしょう.

  • その他は同じ
    その他は普通のQSOに発行するのと同じです.JARL会員手帳にもQSLカードに必要なことが出ています.この際、確認してみませんか?

質問はこちらにどうぞ

リンクページ JO2OXL 7K4IIN


INTERNATIONAL AMATEUR RADIO UNION (IARU)

SUMMARY RECORD OF THE IARU INTERNATIONAL AMATEUR RADIO SATELLITE FORUM
HELD IN SAN DIEGO, 8 OCTOBER 1999

OPERATION OF FM SATELLITES

The Forum accepted the following recommendation to be published as a guideline for satellites carrying FM transponders operating in a "repeater-like" mode. All AMSAT groups are requested to work with their local IARU member society to encourage its use.

Recognising that satellites carrying FM transponders operating in a "repeater-like" mode require an appropriate set of operating procedures because they operate at a high altitude and cover a wide area. Therefore, the IARU International Satellite Forum recommends that operators use only the best of operating practice including:

  • 通信を成立するのに必要最小限の電力を使うこと。

  • 送信は短く(最長20秒)し、送信と送信の間には他の局がブレークインできるように間をあけること。

  • 常に他のQSOに加わろうとする局のことを配慮する。

  • 送信を試みる前に、衛星からの信号を受信できることを確認する。 状況を正しく把握しておくために、初心者は送信を試みる前に最低一回のパスを受信することを勧める。

  • ドップラーシフトに注意すること。 特にアップリンクが 435MHz 以上の周波数である時は、受信側だけでなく送信側にも配慮が必要になる。


Last update 08/13/2000
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