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[jamsat-bb:14844] AO-40 Update, 2004-01-28


JJ1WTK 坂本です。

 Stacey Mills, W4SMが amsat-bbに流していた "AO-40 Update, 2004-01-28"を
紹介します。

 最後に、Staceyの個人的なコメントがあります。これを「手記」として日本語
にしました。"day job"という言葉が出てきますが、日中の仕事、つまり彼の本
業のことです。彼のWebサイト(http://http://www.keplerian.com/)から辿って
みてください。メインバッテリを切り離す、という表現がありますが、これは、
彼の中では患者の患部を切除するのと同じ思いなのだと思います。

今回は長いので、原文は省略します。原文のヘッダーは次のとおりです。

----------------------- Original Message -----------------------
 From:    "Stacey E. Mills" <w4sm@AMSAT.Org>
 To:      amsat-bb@AMSAT.Org
 Date:    Wed, 28 Jan 2004 15:05:22 -0500
 Subject: [amsat-bb:74733] AO-40 Update, 2004-01-28
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 今のところ、AO-40について広報するべき新しいことは、管制チームはEUで今
日のKバンドの送信機をONにするのをワッチできる受信局がいるかどうか探して
いるということぐらいで、その他に特にはありません。衛星までの距離は遠いし、
スクイントアングルも良くないし、受信側では雪あるいは氷のせいで
条件としては決して良くないのですが、それでも我々はトライしています。
 もし、AO-40の電圧が10〜14Vあれば、IHU-1、MUXハードウェアコントロールユ
ニット、それから受信機は動作するでしょう。しかし、S2送信機はそのような電
圧でのコールドモード("cold" mode)からの動作は期待できません。S2送信機は、
20V以下の電圧でも動作するようには設計されていません。そこで、我々は、Kバ
ンド送信機ならそのような電圧でも反応があるのではと期待しています。既にお
知らせしたように、我々はハードウェアを起動し、補助バッテリに切り替えるた
めのシンプルな機械的コマンドをAO-40に向けて送信しています。もし10V前後の
電圧があるなら、これらのコマンドは機能するはずなのです。安全のために、コ
マンドを送ったあとは、すべての送信機をOFFにしないといけません。今のよう
な低電圧の状態では、送信機をONにしたままにしておくわけにはいきません。

 もし主バッテリの電圧が動作下限電圧を下回っているなら、ソーラアングルが
改善するのを待つか、あるいは劣化してしまったセル(電池)のひとつがなんら
かの拍子にオープンになって、電圧が回復するのを待つことになります。

 ブレテンボード(amsat-bbのこと)を読む十分な時間はなかったのですが、我
々は本当に起こったことが何だったのかを完全に把握できませんし、また運用上
のことは、常に完璧ではなかったにせよ、今回の出来事と全く無関係だったこと
は明らかです。日曜日にパスバンドがOFFになったという事実は、我々が衛星に
搭載された回路を保護するために設定しておいた安全機能が働いた結果です。安
全機能には、入力のAGCと出力のリミッターもあります。AO-40は、ユーザーがど
んな使い方をしようと、それを受け入れるしかありません。日曜日、パスバンド
には多くのユーザーがいて、過負荷が限界ぎりぎりに及んで電力収支がマイナス
になりましたが、その時に主バッテリーの別のセルが劣化したことがパスバンド
のシャットダウンにつながったということは明らかです。

 AO-40の主バッテリーは、40AH(アンペア・アワー)の電池を20個使って構成さ
れています。20個は、7個を1パックにしたものが2つと、6個を1パックにしたも
のです。衛星内部で半径方向に伸びた3本あるサポートアームの内部に1パックず
つ納められています。その主バッテリは、400Nキックモーターのアクシデントの
時に損傷を受けていたと考えられています。というのは、3つの電池パックにそ
れぞれ取付けられている温度センサーのうち、3つのうちの2つまでが使用不能に
なっていて、そのため、今回のアクシデントの際にも、温度測定ができていたの
は3つのうちのひとつだけだったということがあります。この1パックだけが唯一
の無傷な電池パックだったのかもしれません。

 テレメトリでは分からないミステリーのひとつは、今回のバッテリ劣化を引き
起こした"エネルギー"はどこから来たのか、ということです。既に話題になって
いるヒートパイプのスパイク(急激な温度上昇)は、我々は現実には起こったも
のではないと考えていますが、これを除けば、問題の時点から15分後まで温度変
化はどこにも起こっていません。劣化した電池があって、この電池は容量がほと
んどなくなっていて、ほとんどエネルギを取り出せない程度まで劣化が進行して
いた、というのがおそらく答えだと思われます。補助バッテリは、多分、問題の
時点では数パーセントしか充電されておらず、十分なエネルギを供給できなかっ
たのでしょう。その2つの電池パックの温度がどちらも、問題の時点で変化を示
していない、ということが、この結論を裏付けています。

 ここで述べたことは、運用上の問題の部分は別にして、我々の現時点における
最良の理解ですが、今後も変わっていくことはあり得ます。随時、お知らせしま
す。
  
  W4SM, AO-40 コマンドチームを代表して

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個人手記
PERSONAL NOTE:
 私に限らず、コマンドチームのメンバーは皆そうなのですが、私はこの4年間、
AO-40とともに生き、呼吸をしてきたと言っても過言ではありません。我々は、
眠っていても400bpsPSKが聞こえますし、心の中で400bpsPSKをデコードします。
電圧が急激に低下していった「あの時」、私はテレメトリの電圧値から目を離す
ことができませんでした。私の仕事("day job")では、人体の中で手の出しよ
うがないほど急激に進む出来事に直面しなければならないことがしばしばあるの
ですが、「あの時」の感じは、まさにそれと同じでした。重大な結末につながる
かもしれない判断を即座に決断しなければならないことが私の仕事の一部です。
 私は、すぐに深刻な電源の問題だと気が付き、一時はメインバッテリを切り離
し、代わりの補助バッテリはほとんど完全に放電状態で、しかも負荷を掛けての
テストをしたことがないけれども、それでも補助バッテリに切り替えようと考え
ました。しかし、根本的な原因がどこにあるのか明確になっていないのだから、
状況をよく把握して何が起こっているのかを見極めるほうを選択しました。一般
的には、「急いては事をし損じる」がほとんどの場合に当てはまると思います。
しかし、今回の場合はそうではありませんでした。そして、結局は、主バッテリ
を切り離すことにしました。「後悔先に立たず」。そして、もし現実にクラッシュ
していたら、私はきっと自分自身をどんなに叩いて傷めても気が済まないでしょ
う。

 何とかしてAO-40を復活させることができるなら、我々はどんなことでも実行
します。現在の電圧は低すぎるけれど、衛星が他のダメージを受けていないなら、
長い間には問題のセル(電池)がオープン(導通状態)になって復活するかもし
れません。ちょうど、AO-7のように。ひょっとしたら、それは今日起こるかも知
れません。向こう数週間あるいは数ヶ月の間に朗報がなかったとしても、それは
決して今後一切希望がないということではないのです。我々はトライを続けます。

何人かのかたが書いてくれたものは、とても支えになりました。
ありがとう。

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  Stacey E. Mills, W4SM    WWW:  http://www.keplerian.com
    Charlottesville, VA     PGP key: http://www.keplerian.com/key
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