[Date Prev][Date Next][Thread Prev][Thread Next][Date Index][Thread Index]

[jamsat-bb:9473] Re: JA製FM衛星


JF6BCC 今石です。

At 2001/09/04 23:19:11 taka wrote:
> さて、10日ぐらい前、H2−Aでしたか90億円のロケットが3度目で、
> ようやく成功したようですが、単なる重りを打ち上げたらしいですね。
> 次回は、ミラーボールを打ち出して、軌道計算に使うとか、新聞に出てました。
> 90億円の、ミラーボールの隣にSO−35程度の、アマチュア衛星でも乗せられないの
> でしょうか。

  これなんですが、H2-A 1号機の打ち上げがトラブルで延期になり、契約
していた商用衛星の打ち上げがキャンセルになって、ロケットの試験用に単
なる「オモリ」を打ち上げると言う話が出た時に、もったいないから、何と
かアマチュア用の衛星を(ビーコンを送出する程度の簡単なものでもいいか
ら)上げてもらえないか、と言う話題が BB で出ました。で、結局どなたか
に交渉してもらったのですが、ロケットの打ち上げ試験に集中したいのでダ
メ、と断られたと記憶しています。
  今、BB の過去ログをサーチして、いつ頃の話題だったのかを探そうとし
たんですが、見つかりませんでした (^^;)。

  ただ、仮にペイロードが取れたとしても、準備期間が足りなさすぎて、
「SO-35 程度」の衛星は無理だったと思います。我々は気軽に「FM 衛星」
と考えていますが、UO-14, AO-27, SO-35 ともに、非常に高機能な衛星であ
って、あくまでその一部に FM レピータの機能があると言うだけの話です。
来年に打ち上げが予定されている、東大・東工大の参加している Cubesat
プロジェクトにしても、学生が主体とは言え準備には数年かかっていますよ
ね。
  また、そういう「いつかは打ち上げてもらえるチャンスがある」と期待し
て、いつでも飛べる衛星を準備しておくのもひとつの手です。そうやって、
実際にエンジニアリングモデルの製作プロジェクトを立ち上げようとしてい
る愛好家も北米を中心に居るようです。打ち上げ予定のない衛星の製作にか
かる費用をどう捻出するか、と言う問題は無論ありますが…。

  しかし、ロケットの相乗りのペイロードを狙っているのは我々アマチュア
無線家だけではありませんので、そういう競争相手に対して優先度を得てロ
ケットに乗るには、優先度を得られるだけの「必要性」を示さなくてはなり
ません。そういう時に「単なるビーコン衛星」や「単なる FM レピータ衛星」
では、説得力無いと思いません? (^^;)。それって何の役に立つの?、と言
われて反論できます?。
  結局、もっと先進的な、もっと画期的なシステムを実験するための衛星と
して準備して、その機能の一つとして FM ベントパイプレピータがある、っ
て形を取らないと、今後 FM レピータ衛星ってのは実現しないと思うんです
よ。今月中旬に打ち上げられる PCsat, スターシャイン、サファイアの各衛
星は、どれも非常に先進的、あるいは個性的で、打ち上げの必要性について
の説得力も十分ありますよね。

  無論、正規の打ち上げ費用を払うのであれば、どこのロケット開発機関だ
って、どんなものでも(たとえ植木蜂の敷き皿でも… ^^;)打ち上げてくれ
ると思いますよ。ロシアの弾道ミサイル用ロケットを利用する LEO 用の打
ち上げが仮に 20 億円だとしたら、千人の賛同者が 20 万円ずつ持ち出せば
賄える計算ですよね (^^;)。誰か一人がジャンボ宝くじに当たれば、負担は
更に2割引に… (--;) え?、そんなの期待するな?。

> AO−40も一般的なハムには、敷居が高すぎます。
> もっと簡単にアクセスできる衛星が欲しい。

# AO-40 を使っている私が「一般的なハム」でないと言う自覚は無いのです
# が (^^;)。

  FM ハンディ機とホイップでアクセスできるのを「簡単な衛星」とすれば、
AO-40 はまだまた高度な衛星ですね。その意味では SO-35 は、混信の無い
豪州大陸では実際にハンディ機とホイップで列車の窓から利用できたそうで
すから、最も簡単な衛星と言えたと思います。
  ただ、AO-40 が高度だからやらない、と言って、やる人が居なくなったの
では、衛星通信を支持するハム人口は減少するばかりで、次の衛星はもう上
がらなくなると思います。現に今でも、Phase-3E 衛星の計画はあるものの
その内容は AO-40 より後退した小型のものになっていますし、しかし打ち
上げ費用はまたも膨大なものになりそうですしね。

  ところで、こういう衛星が欲しい、と北米の AMSAT-BB (英語) に投稿する
と、まずまちがいなく「じゃああんたが作ればいい」と言う反応が返ってく
ると思います。これは極端な言い方ではありますが、唯一の解決策を示して
いる「正しい答え」だと思いませんか?。アマチュア衛星ってのは商売にな
らないのですから、自分達で作らないと、誰も作ってくれないんですよ。
  無論、ここで言う「自分達」ってのは、皆さん一人一人が自力で、衛星を
設計し、フレームを製造し、PCB を抜き、部品をハンダ付けして調整し、打
ち上げロケットを持つ組織と交渉して実際に軌道に投入しろ、と言っている
訳ではありません。素人に出来ないことは逆立ちしたってできませんよね。
ただ、そういう技術を一部でも持っている「同好の志」が居るなら、団結し
てひとつのプロジェクトを作り、足りない部分を補いつつ、できることで協
力し、自分達の手にあまる部分はプロの助力を得て、目的を達成する、そう
言うことは可能なはずです。「自分で衛星を作る」というのは、そういうプ
ロジェクトに参加することに他ならないと思います。
  で、そういうプロジェクトに JAMSAT やら AMSAT やら JARL やら大学や
らメーカーやらを巻き込み、カネを出してくれそうなスポンサーを掴み、プ
ロジェクト名にそれらの組織の名称をつけることと引き換えにして「自分達
の衛星」を実現する、アマチュア衛星ってのは全て、ソ連時代の RS 衛星で
あっても、結局はそういう人達が主導権を握り、組織と資金を利用して実現
したものであって、組織は名前を使わせただけだ、と言ったら言いすぎでし
ょうか?。私は案外、的を得ていると思ってますよ。

  こういうプロジェクトが1つも動かなくなった時には、アマチュア衛星通
信も終わりでしょう。ISS との通信や EME、あるいは「ISS 反射通信」と言
った、個人的な範囲で可能な分野のみ生き残るでしょうけど。
  宇宙開発が進み、軌道と地球を往復するシャトルが頻繁に行き来するよう
な時代になれば、あるいは衛星の打ち上げの事情も変わるかも知れません。
シャトルから 10kg 程度の衛星を放出してもらうのが数百万円程度の費用で
できるようになるかも知れません。が、その時までに衛星通信の「灯」を絶
やしてしまったのでは意味がありませんよね。

  私は、AO-40 が高度な衛星だとは思っていません。物干し台に置いた3脚
にセットした、ブーム長 2m 足らずの八木アンテナと、個人に手の届く安価
な受信コンバータがあれば、欧米と SSB でラグチューすることが可能にな
る、今までに無かった「簡単な」衛星だと思っています。AO-10/13 で苦労
した昔を思えば信じられないくらいの簡単さです。確かに、度重なる事故で
能力の半分も出せていないのが現状ですが、推進剤の爆発で四散してしまっ
たかも知れない危険を乗り越えただけでも、我々は幸運だと思います。
  それと、SO-35 のような「ハンディ機とホイップ」で可能な衛星と言うの
は、初心者にとっては敷居が低く、興味を持ってもらうには適切だと思いま
す。が、仮に SO-35 しか無いとなれば、技術的な工夫をしなくても交信で
きるだけに、飽きるのも早いでしょうね。技術的な興味を持ち続けてもらう
ためには、ある程度は「難解」なシステムを必要とする衛星があってしかる
べきだと思いますし、それを克服していただかないと、衛星を作るという動
機も出てこないのではないかと (^^;)。

> 昔あった、イリジューム衛星を使った携帯電話のような衛星通信って
> 無理なんでしょうか。ハイレバルな方たちがいるjamsatでは
> こんな話は、ナンセンスなのでしょうか。?

  イリジュウムが倒産してしまったことが、その可能性を端的に表してい
ると思います (^^;)。現在の技術で実現するには、費用がかかり過ぎたと
言うことですね。まして、収入を期待できないアマ衛星では…。

> FO−29もコントロール不能になっているようですし、新しいJAのFM
> or SSBのアナログ衛星が欲しい。

  FO-29 は動いていますよ?。FO-20 だってアナログ衛星として立派に動
作しています。アナログ衛星がお望みなら、何の不足も無いと思います。
それに仮に、新しい SSB の LEO 衛星を上げても、そのパフォーマンスは
FO-20/29 と大差無いと思います (^^;)。確かに、デジタルモードやデジ
トーカへの切り替えには成功していないようですが、衛星のコンピュータ
が壊れた訳では無いですし、デジタルモードの衛星は他にもあり、またデ
ジトーカ機能を持つ衛星はまもなく上がります。日本製にこだわる必要は
無いですよね。

# それに、先進国の意地でふじ4号を上げたとしても、それがふじ3号の
# コピーだったりしたら、「サルマネニッポン」「技術の進歩の無いニッ
# ポン」と評価されるだけでしょう。日本の威信を背負ってふじ4号を上
# げるなら、もっと高度なものにしないと (^^;)。

  それと、個人的には Mode-J の FM 衛星は、アジア上空では 2m 帯から
の混信で使い物にならないと思っていますので、新しく上げる衛星は Mode-B
を主体にして欲しいと思っています。あるいは、日本で fm 衛星を企画す
るのであれば、S バンドのビーコン機能と、L バンドアップリンク、U バ
ンドダウンリンクの FM ベントパイプレピータを搭載させたいですね。L
帯の大きなドプラーシフトに対応するため、帯域 50KHz 程度の FM 検波が
可能な専用の受信機を使って、アップリンクをズラさなくても音声がうま
くダウンリンクに乗ってくるような仕組みか取れないか、とも思っていま
す。

> このコーナーにではなく、JARLにでも、言うべきことなのでしょう
> が、JARLとお付き合いがないので(QSL転送以外)POSTしま
> す。

  ここに投稿するのは間違いとは思いませんが(私も JARL とのお付き合
いはさほどありませんし)、JARL に期待するのと同様のことを JAMSAT に
期待するのは間違いだと思います。JARL は(痩せても枯れても)数万人の
会員を持つ大組織ですが、JAMSAT は会員数百人の小規模組織に過ぎません。
それに、仮に JARL に言ったところで、誰かが音頭を取って衛星プロジェ
クトを立ち上げないことには始まらない点は、JAMSAT と変わらないと思い
ますよ。
  BB に「こういう衛星があったらいい」「こういう問題点はこうやったら
解決できるのではないか」と言う投稿があるのは歓迎ですが、欲しい、と
言われても、ポケットに手持ちがある訳ではないので困りますよね (^^;)。
衛星を作るってのは、確かに大変で、初心者の方にいきなりそういうこと
を強制するのは無理です。が、一人でも多くの方が「作ってみたい」の方
向に興味を向けていただけたら、と思います。

# でないと、誰も衛星を作らなくなってしまいますからね。

では。
- -
Yoshihiro Imaishi 今石良寛 - 福岡県北九州市
JF6BCC, KH2GR (ex. T88J, T88IY, V63BP)
jf6bcc@jarl.com or jf6bcc@jamsat.or.jp
<http://plaza16.mbn.or.jp/~palau/> 
- -
この電子メールは100%再生電子を使用しております。:-)