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[jamsat-bb:8152] AO-40の現状報告とサン・アングル関連の情報@AMSAT-bb


JF6BCC 今石です。

  AO-40 プロジェクトチームの DB2OS から AMSAT-bb に、AO-40 の現況につい
ての報告があがっていました。サイズの関係で邦訳文のみ記載します。原文は
AMSAT-bb またはこちらをご覧下さい。

http://www.amsat.org/amsat/archive/amsat-bb/48hour/msg03675.html

> From:    Peter Guelzow
> Subject: [amsat-bb] AO-40: Hibernation #1 - Sun Angle & Attitude
> Date:    2001/04/25 02:54:27

  皆さん。

  AO-40 は見込み通りに推移しています。4/23現在までの姿勢の測定結果は以下
の通りです。

   Orbit   alon alat
 ----------------------
   202     142        *
   203     138        *
   204     136        *
   205     133        *
   206     132        *
   207     128   14   **
   208     127        *
   209     125        *
   210     121        *
   211     119        *
   212     116        *
   213     114        *
   214      -     -
   215     109        *
   216     106   11   **
   217      -     -
   218     102        *
   219      -     -
   220      98        *
 ----------------------
  *  センサの停止数から ALON を測定
  ** ガメラ画像から ALON/ALAT を測定
  1周期(近地点)毎に -2.43 の ALON 変化。

> RMS fit: 0.52? 
# これどういう意味ですか?。

姿勢変化の見積もりと温度測定結果

 姿勢             | 電池温度(摂氏)   | タンク温度(摂氏)  | パネル温度(摂氏)
 Orbit lon/lat SA | Main2 Aux1  Aux5 | MMH-3 N204+  NH3-2| IHU   EPU    2-5
 -----------------+------------------+-------------------+-------------------
 200          -41 | 29.8  33.1  21.1 | 19.3  17.3   31.8 |  9.4  19.9   9.0
 201          -43 | 31.1  35.1  21.9 | 19.9  18.6   33.1 | 10.0  21.2   7.1
 202  141  16 -46 | 33.8  37.1  22.6 | 20.6  19.3   35.7 | 10.0  21.9   1.8
 203  139  15 -48 | 35.1  39.0  23.2 | 21.2  20.6   37.1 | 10.0  22.6
 204  136  15 -51 | 36.4  39.7  23.9 | 21.2  21.2   38.4 | 10.0  23.2  -2.5
 205  134  15 -53 | 37.1  41.0  23.9 | 21.2  21.2   39.0 | 10.0  23.2  -4.5
 206  131  14 -55 | 37.7  41.7  23.9 | 21.2  21.2   39.7 |  9.4  23.2  -6.4
 207  129  14 -57 | 37.7  41.7  23.2 | 20.6  20.6   39.7 |  8.7  22.6  -8.4
 208  126  14 -60 | 37.1  41.0  21.9 | 19.9  19.3   39.0 |  8.1  21.9 -10.4
 209  124  13 -61 | 37.1  40.4  21.9 | 18.6  17.9   38.4 |  6.7  20.6 -13.7
 210  121  13 -63 | 36.4  40.4  21.2 | 18.4  17.3   38.4 |  6.1  19.9 -15.0
 211  119  13 -65 | 35.7  39.7  20.6 | 16.6  16.6   37.7 |  5.4  19.3 -17.0
 212  117  12 -66 | 35.7  39.0  20.6 | 16.6  16.0   37.7 |  4.8  18.6 -18.3
 213  114  12 -67 | 35.1  39.0  19.3 | 15.3  15.3   37.1 |  4.1  17.9 -19.6
 214  112  12 -67 | 35.1  39.0  19.9 | 15.3  14.7   37.1 |  4.1  17.9 -19.6
 215  109  11 -67 | 35.1  39.0  20.6 | 16.0  14.7   37.1 |  4.1  17.9 -19.6
 216  107  11 -67 | 35.1  39.0  20.6 | 16.0  14.7   37.1 |  4.1  17.9 -19.0
 217  104  11 -66 | 35.1  39.0  19.9 | 16.0  14.7   37.1 |  4.1  18.6 -18.3
 218  102  10 -65 | 35.1  39.0  20.6 | 16.0  15.3   37.1 |  4.8  18.6 -17.6
 219   99  10 -64 | 35.1  39.0  20.6 | 16.6  15.3   37.1 |  4.8  18.6 -16.3
 220   97  10 -63 | 35.7  39.0  21.9 | 17.3  16.0   37.7 |  6.1  19.9 -13.7
以下はまだ
 228   78   7 -45 |  2001-04-29      |                   |
 -----------------+------------------+-------------------+--------------------
 ALONの変化率               -2.428/近地点
 そのうち歳差運動による変化 -0.161/近地点
 未知の力による変化         -2.267/近地点

  以下は G3RUH から提供された情報です。

- - - - -
  「1回目の冬眠の調査結果(あるいは「カメラは死んだか?」)
                            by James Miller G3RUH  2001/4/24

要約

    1回目の冬眠 (2001年1〜2月) 中、AO-40 のサン・アングルはおよそ 60 度
  程度で、心配されていた 90 度近くへは至らなかった。このおかげでカメラは直
  射日光で撮像素子を焼損せずに済んだ。この調査は太陽電池パネルの温度測定結
  果を基本にしている。姿勢変更に働いた「未知の効果」についてはまだ原因を特
  定できていない。

はじめに

    IHU-2 の写真画像の品質は現在かなり劣化していて、何が起こったかの調査が
  必要だ。可能性として、1回目の冬眠中(「冬眠」については別記参照)にサン
 ・アングルが 80 度を超えカメラを焼損させたのかも知れない。

過去の状況

    サン・アングルの測定結果(別記)によれば、1回目の冬眠の直前の衛星の姿
  勢は 258/-15 付近であることを示している。これは、黄道上での1回目の冬眠
 の最中に90度のサン・アングルによってカメラが焼損するかもしれないと言う
 心配を否定するものだが、当時はこれは現実に心配されていた。
    1回目の冬眠は 1/8〜4/5 の 12 週間と予測されていたが、驚いたことにこれ
  はわずか7週間後の 2/24 に終了した。この結果、我々は「未知の現象」が発生
  したことに直面した。
    サン・アングルの測定は、1回目の冬眠の終了後ただちに開始され、姿勢は
  208/-26 だった。これも黄道面に横たわる形であり、サン・アングル 90 度とな
  る位置を通過したかも知れない。

The Wisdom of Hindsight
# 何て訳すのがいいのかな…。「後からわかったこと」?。

    2回目の冬眠は状況が困難ではなく、この問題を理解するのに適切だった。2
  回目の冬眠中、地球センサからの情報で全ての周期で、また IHU-2 カメラデー
  タを時々利用して ALON を測定することができた。また、スピン中のフェーズ3
 衛星での基礎的な常識とは反する現象を発見した。AO-40 のスピン軸の方向は
  inertial space (慣性空間?) 中で動いていたのだ!。測定結果は ALON 値が
  -2.46/近地点の割合で、「未知の効果」により変化していることを示していた。
    この ALON 値の変動は、1回目の冬眠中にも起こっていたと考えるべきだ。そ
  してこの未知の効果は、時間の経過によって姿勢は変化しないと言う仮定のも
 とに、サン・アングル変化を使って姿勢を決定しようとすることは、誤った結果
 をもたらすことにつながる。つまり、1回目の冬眠以降、姿勢は常に変動してい
  て、黄道面に常に居たわけではなく、サン・アングル 90 度になる危険を回避で
  きた可能性があると言うことだ。

温度の測定

    さて、1回目の冬眠中、最もサン・アングルが悪かった状態はどんなものだっ
 たのか、直接の測定なしに姿勢を見積もることができるのだろうか。
    衛星の温度を見れば可能だ。太陽電池パネルの温度センサが、サン・アングル
  を知るのにもっとも適切だろう。1回目の冬眠中 (Orbit 89-149)、我々は近地点
 直後の MA 0-18 と言うごく限られたチャンスにしか、テレメトリデータを得ら
  れなかった。食は MA=5 で終わり、MA < 15 の位置にある時には、地球からの放
  射熱が大きく影響していたため、太陽電池パネルからの温度データ取得は単純な
  事ではなかった。
    この膨大な観測データを扱うために、私(James)は、オービット毎にもっとも
  テレメトリ受信の困難な MA 89〜149 のデータ(VP9MU アーカイバから取得可能
   なものから) をチェックするプログラムを作成し、2〜5 の4枚の太陽電池パネ
  ルの温度の平均値を算出した。
    この結果、1回目の冬眠の最悪期 (Orbit 113-127) の、地球と食の位置から
  可能な限り離れた位置でのパネル温度は -11〜-13 度であることが判明した。

温度からサン・アングルを計算する

    この温度データからサン・アングルは計算可能なのか?。サン・アングルが測
  定不能となる +45 度以上の領域では、直接に調整したデータが存在しないこと
  を思い出して欲しい。
    しかしながら、我々は、2回目の冬眠時に特性が把握できたサン・アングルと
  太陽電池パネル温度の関係データを持っている。違いは、1回目のサン・アング
  ルは正の値(衛星上面から日が当たる)、2回目は負の値であると言うことだ。
    ここで、太陽電池パネルの温度特性が、サン・アングル「゛゜ロ」を境に対称
  的であると言う、大胆な仮定をしてみよう。つまり、太陽電池パネルが太陽熱を
  受ける量は、サン・アングルが正負どちらにあっても同じだと言うことだ。これ
  は完全な仮定とは言えないが、さほど違うとも言えないはずだ。
    2回目の冬眠中、太陽電池パネルの温度は、サン・アングル -60 度において
  -11〜-13 度だった。このことから、1回目の冬眠中の最悪なサン・アングルも
  +60 度程度だったと言えるだろう。この式は IHU-1 カメラ(訳注:IHU-2 ?)
  と、大事な SCOPE カメラとが、ともに太陽光でのダメージを受けていないこと
  を意味することになる。

実際には何が起きたのか?

    1回目の冬眠中の姿勢変化データから、このような推論を行うことができる。
  Orbit 120 付近での +60? 度のサン・アングルとは、ALAT +7? 程度であると推
 測できる。ALAT 値を、冬眠の開始時と終了時の値を元に同様に推測してみると、
  このような姿勢変化となる。

         |  Orbit  SA   alon  alat
   ------+-------------------------
   Entry |   89    46   241    7
   Nadir |  120    60   227    7
   Exit  |  149    46   214    7
   ------+-------------------------
      1回目の冬眠中の姿勢変化

    このデータからは別のこともわかる。ALON の変化率は -0.435/近地点である
  し、通常の歳差運動による ALON の変化は -0.161/近地点であるから、未知の
  効果による姿勢変化は -0.274/近地点であったことになる。

    これを2回目のデータと比較してみよう。

                観測された  本来の   未知の
                 姿勢変化  姿勢変化  姿勢変化  回転数
                  ALON      ALON      ALON   
      Orbits      ?/p       ?/p       ?/p      rpm
     -----------------------------------------------
      89-149     -0.44     -0.161   -0.274    17.60
     202-218     -2.45     -0.161   -2.289     2.05
     -----------------------------------------------

    直感的に、ALON の変化率が回転数に逆比例していることがわかるだろう。
 実際に、最後の2項目はそれを証明している。

    全ては、ほんの限られた、太陽電池パネルの温度データを基礎にしている。
  これは素晴らしい「後知恵」ではないか?。

Homily (説教?)

    この調査は、半年近くも軌道上にありながら、我々はまだ AO-40 とともに
  勉強中であることを明確に説明している、多くのことがらが未調整であり、無
  意味とも思える膨大なテレメトリデータを解析した後でなければ、時にはそれ
 を説明することができない。
    マニュアルを見るだけでは答えは見つからない。マニュアルがある訳ではな
  い。我々は事象があるたびに、まさにマニュアルを書いているのだ。

補足資料

「冬眠 Hibernation」
    サン・アングルが 45 度以上となり、サン・センサーが機能せず、マグネト
  ルキングによる姿勢制御ができなくなる時期を指す言葉。衛星は不適切にサン
  ・アングルによる冷却に耐えなくてはならず、持ちこたえられなくなるほど悪
  化しないことを望むほかない。今までに、冬眠は2回あった。

   Hib. Date         Orbits
  ---------------------------
    1   2001 Jan/Feb  89-149
    2   2001 Apr     202-228
  ---------------------------

「サン・アングル」
    太陽の方向と衛星のスピン赤道面とがなす角度のこと。0度の時、太陽電池
  は最大の輻射を得ることができ、90 度であれば太陽は衛星の上面または下面を
  照らし、太陽電池には光が全く当たらない。衛星制御の目的はサン・アングル
  を +- 45 度以内に保つことにあるが、必ずしも可能ではない。
    サン・センサは、上記の角度の範囲内で、この角度を測定する素子。

「スピン中の衛星」
    角運動量保存の法則は、外部からトルクが加わらない限り、慣性によってス
  ピン軸が固定され動かないことを示す。フェーズ3衛星では、この外的要因と
  なるのは、おそらくマグネトルカの動作によるトルクのみ。これ以外に姿勢変
  更が起きるのであれば、他に外的な力が加わっているはず。
    姿勢の方向は、モーメンタムホイールなどによる慣性重量の移動によっても
  変更することができる。

「テレメトリ・アーカイバ」
    以下の URL からテレメトリ取得が可能。データを送るには zip で圧縮した
  上で ao40-archive@amsat.org へ。
   ftp://ftp.amsat.org/amsat/telemetry/ao40
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