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[jamsat-bb:7892] AO-40/10GHzの最適アンテナの検討


こんにちは。藤本(JH3ERQ)と申します。

AO40の10GHz用アンテナについて考察してみました。
パラボラを用いるとして、その径に最適値がありそ
うなことが判明しました。

=アンテナゲイン=

例えば4倍の直径のパラボラアンテナは、4^2=16倍
すなわち+12dBのゲインがあります。これは発
信源(AO40)が点光源と見なせる場合です。
ところが10GHzでは、大気の水蒸気散乱があります。
大雨の時にBS放送の写りが悪くなったり、見えな
くなったりすることからも、この周波数では水蒸気
の影響が問題になることがわかると思います。(
もっとも、雨滴による偏波面変調(縦横比不一致)
もあります)

散乱による点光源の見かけの拡大は、例えば1万km
の距離では、視直径にして5°にもなります。ちな
みに、太陽(≒月)の視直径が0.5°ですので、かな
り大きく見えることになります。(IEEE MTT April
1964 'Sight Angle of Long Distance sattelites'
Loof Lirpa, et al による)

一方パラボラアンテナの半値角(3dBダウンの角
度)は1mφで2°、2mφで1°ですから、50cm
φ以上の直径のアンテナでは半値角<視直径となり
アンテナを大きくしても、ゲインが増えないことに
なります。つまりビームが細すぎて、AO40全体が見
えない(送られてくる電力を捕捉できない)ことに
なります。

=アンテナノイズ=
上記理由によりアンテナゲインは頭打ちはしますが、
飽和するまではアンテナを大きくするとゲインは増
大します。
しかしながら、アンテナを大きくすると受信ノイズ
が増大するという問題があり、システムのS/N
(実はS+N/N)が悪くなります。音ばかり大きくて弱
い信号のピックアップができない安物のプリアンプ
のような状態ですね。
10GHzではシステムノイズが100K程度が実現可能
(プリアンプで70K、フィードロスで30K)です。
AO40自体の温度は300K位でしょうが、この熱雑音
がどれだけ受信してしまうかはアンテナ直径によりま
す。下記資料では5m程度のアンテナで全ノイズを受
信することになります。この受信ノイズパワとアンテ
ナ直径の関係は
0.5mφ・・・40K
1.0mφ・・・150K
2.0mφ・・・600K
となっています。(Universal Sattelite Organization
800(USO-800) April 1 1982 Akab Ustagihsによる)

=アンテナ直径の最適値=
上記をまとめると
(1)アンテナ直径を大きくしてもゲイン増大分は頭打
  ちする。
(2)アンテナ直径を大きくすると、受信熱雑音が大き
  くなる。
ということになり、アンテナ直径のオプチマムがあり
そうです。
システム温度を150Kに仮定して上記をグラフ化
すると直径50cmが最適値となり、これより大きく
ても小さくてもS/Nが悪化するという結果になりま
した。
フィードのスピルオーバ分は検討していませんが、
1dB程度の悪化でしょうから大差ないようです。BSア
ンテナの転用が良い結果を出しそうです
。
図表は省略しましたが、ご興味のある方はPDFでお送り
しますのでお知らせ下さい。

以上

藤本 JH3ERQ 2001年4月1日