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[jamsat-bb:4761] 京大MUレーダー見学記


JAMSAT NEWS LETTERにも案内が掲載されていましたが、10月31日(日)に開催さ
れた京都大学MUレーダーの一般公開に参加してきましたので、簡単にレポートした
いと思います。同一般公開は、今回で2回目となりますが、JAMSATとしての見
学を含め、私は3回目の見学となりました。
会場にはJAMSATメンバーである北村さんはじめ、大勢のハムの方々が訪れていました。
また、香田さんもいらしていたようです。

 先ず、最初に興味をもったのは、車載型のミリ波(34GHz帯)レーダーでした。
このレーダーは、観測用の電波に波長の短い電波を利用することによって雨の粒子に
比べ、非常に細かな粒子(霧)をも捕捉できるものであり、一般の気象レーダーには
無い優れた特長をもっているものでした。その横に展示されていたLバンド1.3G
Hz帯12素子×12素子×4面フェイズド・アレイアンテナを使用した対流圏観測
レーダー装置も壮観そのものでした。また、来年にはHF帯の電波を使用した新しい
流星レーダーの設置も予定されているとのことでした。

さらに今回は、これまでレーダーアンテナとして3方向に個別のアンテナを使用して
いたもの(1号機)を、フェーズシフトすることにより1つのアンテナで観測を可能
とした車載型のSバンド3GHz帯の境界層レーダー(3号機?)が展示されていま
した。このレーダーは、実際に鹿児島県の出水豪雨の際、地表〜上空5km程度迄の
風の水平方向の流れがリアルタイムで捉えており、時系列で表現された観測データを
大変興味深く拝見しました。

MUレーダーでは、RASS観測という音波を利用した大気の観測方法があります。
今回は、これに使用する音源(ウシ蛙の鳴き声?)を実際に聴けるようにしてありま
した。3台のスピーカーが展示されていましたが実際には20台のスピーカーから鳴
り響くことを思うと、凄じい音になるだろうことは容易に想像できました。
ちょうどMUレーダー観測所の近くに住んでいるのだが・・という方も来られており、
何処からともなく聞こえてくる声の「正体」が判って安心されていた様子でした。

屋内展示では、FAIの観測例や今年の獅子座流星群にむけてのビデオ放映などがあ
り、非常に参考になりました。また、前回の展示にはあったMURO(MUレーダー
の電波を利用した流星観測)関係の資料が少な目になったという印象を受けました。

最後に、アメリカから来日中の客員教授による講演を拝聴しました。「地表で発生し
た波動が100km程度の上空まで増幅されながら伝わり、これがE層領域にも影響
を及ぼし、ひいてはEsの発生にも関与する可能性がある。」というものでした。
私の感想としては、対流圏で発生した波動が、どういうメカニズムで高層大気まで伝
播していくのかという説明は、いまひとつ良く理解できませんでしたが、実際に山脈
に当たった風の波動が上空に伝わり、縞模様の筋となってはっきりと雲画像に出現し
ているのをみて納得しました。これは、無線通信に携わる私たちにとって非常に身近
なテーマでもあり、今後の研究が重要となることは間違いないと思いました。

会場では、午後3時に高層の気温・気圧・湿度を観測するための気球(ラジオゾンデ)
が放球され、凪の信楽上空へと一直線に揚っていく様子を、見学にきた子供達と眺め
ていました。一般公開は午後4時半に無事終了し、現地解散となりました。
新しいレーダーが次々と開発されていることを目の当たりにした一般公開でした。


             JH4DHX/3 大谷  Nov.3rd '99