500円八木アンテナ
JAMSAT
JASMAT 日本アマチュア衛星通信協会

435MHz用6エレメント八木の製作(改訂版)

    手持ち八木アンテナで衛星を追う


Clear Lake Amateur Radio ClubのKent Britain, WA5VJBによる、"Cheap Yagi Antennas for VHF/UHF" 日本語版 The Central States VHF Society Conference Proceedings, 1994 には、角材と電線でつくる“500円”アンテナが紹介されています。 この費用<対>利得を極限まで追求したV/UHF用アンテナ群は、材料の乏しいキューバのアマチュアとの会話から生まれました。その構成は、まずシンプルで作りやすく効率の良い給電部を実験を重ねて製作し、前後のエレメントでマッチングを取り、高F/B比を得るようにYagiMaxで配置を設計し、NEC(the Numerical Electromagnetics Code) を使って改善する手法により決定されました。 広帯域な設計ですから、5mm程度の誤差は性能に大きく影響しません。

ブームには1/2インチ(13mm) x 3/4インチ(19mm)の木材を使い、エレメントは1/8インチ(3mm)程度の直径であれば銅線、アルミ棒、アルミパイプなどなんでも同様な結果を得られます。 エレメントは角材にあけた穴に挿し込み、接着剤などで固定します。たすきがけの輪ゴムで固定すれば分解可能な八木になります。組み立て後にウレタン塗料などで木部を保護すれば完成です。屋外に設置するのであれば、給電部をシリコーンシーラントなどで防水することを忘れないでください。

ブームに塩ビパイプを使うこともできますが、同軸を輻射器に半田付けする際に塩ビパイプを溶かしてしまわないように注意してください。 ブームにアルミ角材を使うと、エレメントをブームから絶縁しないとアンテナの特性は大きく変わってしまいます。

輻射器と整合部は次の図のような非対称のシンプルな構造です。直径1/8インチ(3mm)の棒を折り曲げて、その中央に同軸の外皮を、折り返した先に同軸の芯線を半田付けします。同軸は50オームなら何でも使えます。

435MHz 輻射器の寸法(エレメント数にかかわらずすべて共通)

432MHz用はこちらを参照ください。


輻射器 L = 330mm H = 25mm (導体の中心から中心まで)
すべてのエレメントの直径が 3mm の場合の寸法表

 

435 MHz AMSAT 反射 導1 導2 導3 導4 導5 導6

3 エレ

長さ 343
310          
  間隔 0 64 140          
4 エレ 長さ 343
315 292        
  間隔 0

64

140 292        
5 エレ 長さ 343
318 311 299      
  間隔 0 64 133

305

470      
6 エレ 長さ 340
315 305 305 279

  間隔 0 64 140 286 445 610    
8 エレ 長さ 340
315 305 305 305 305 282
  間隔 0 64 140 286 445 610 775 959

 

 

(単位mm)

では実際に6エレメント八木を作ってみましょう。

小学生と親父が作る435MHz6エレメント衛星通信用八木アンテナ
道具としては、ものさし、ペンチ、ヤスリ、3.1mm位のドリルを用意します。
フィーダーの取り付けには半田ごてやニッパーが必要です。50オームの同軸には、使用する無線機に合わせたコネクタをつけておきます。この例はRG-58A/UにBNCの組み合わせです。
これが材料です。ホームセンターで次のものを買ってきました。ヨドバシ.com でも995mm定尺の金属棒を買うことができます。アルミ棒の代わりに太さ 3mmの盆栽用アルミ針金も使えます。
24x14x910mmの定尺ラワン角材 1本 \140
直径3mmのアルミ棒 1mもの 2本 @\100で\200
直径3mmの銅棒 1mもの 1本 @180
合計 520円でした。
表に合わせて反射器1本と導波器4本を2本のアルミ棒から切り出します。定規で長さを測り、印をつけます。340mm, 315mm, 279mm を各1本、305mmは2本です。
印の外側を切ります。針金と違って、3mmのアルミ棒は小学生でもペンチで簡単に切れます。
切断面で怪我をしないように、印のところまでヤスリで形を整えます。1〜2mm狂っても平気です。長さに神経質になる必要はありません。反射器 1本と導波器 4 本を同じように仕上げます。

輻射器を折り曲げます。 3mmの銅棒は素手でもきれいに曲がるはずですが、曲げにくいときは曲げる場所をガスコンロなどで思いっきり過熱してからゆっくり冷やし、焼き鈍ししてください。 折り曲げた間隔 H は25mm程度であればよく、+/-5mm位の誤差は性能に影響しません。下図のように折り曲げた部分の先端だけ間隔が13mm程になるように曲げて角材に差し込めるようにします。切断面をアルミ棒と同様に怪我をしないように仕上げます。

H = 25mm

注:6エレメント八木については、以前ご紹介した寸法との違いは輻射器の折り曲げ部の幅Hが25mmになったことです

6本のエレメントが完成しました。
ブームにエレメントを通す穴をあけます。 910mmの角材なら切らずにそのまま使えます。 角材の先端から1cmのところに第4導波器を通す穴の印(反射器から610mm)をつけて、あとは表のとおりに0mmの反射器まで印をつけていきます。
エレメントの外径は3mmですから、3.1mmのドリルを使えばエレメントを差し込んだときに硬くもゆるくもない適当な直径の穴が開きます。

エレメントのそろったきれいなアンテナにしたい人は、穴がブームに対して垂直になるように工夫してください。 左は工作台に溝を作り、そこにドリルを沿わせています。これなら小学生でも正確に垂直に穴あけできます。
輻射器のマッチング用の折り返し部分が貫通する穴を輻射器の穴からだいたい13mm離してあけておきます。多少狂っても平気です。
エレメントをブームに通します。3.1mmのドリルを使えば、なにもしなくてもエレメントはほどよく固定されます。 ゆるい場合は、輪ゴムをたすきがけすればよいでしょう。 固定するのなら接着剤で固めます。
輻射器をブームに差し込む前に、輻射器に同軸ケーブルの外覆の網線を、折り返したマッチング部に芯線を半田付けします。このくらいの太さの銅線に半田付けするには少し容量の大きい半田ごてがあるとよいのですが、なければガスコンロで熱します。 玉子ラグにエレメントを通して半田付けし、それに同軸ケーブルを半田付けしても良いでしょう。 エレメントに圧着端子を圧着してもよいです。同軸ケーブルはビニールテープやタイラップバンドなどでブームに固定します。
これで完成です。 ここまでざっと1時間でした。
このままでも使えますが、できれば調整しておきましょう。 送信機とSWRメーターを接続して435.0MHzのSWRを測りながら、輻射器を2〜3mmずつカットしてSWRが下がるところまで切り進みます。10mm切ることはないはずです。切りすぎたら半田付けしてエレメントを長くしてください。周囲に建物があると影響をうけますから、なるべく広いところで調整しましょう。数MHz以上の帯域でSWRは1.5以下になります。無調整で使いたいのなら7~8mm切って下さい。SWRは2以下になるはずです。
さあ受信機に接続して衛星からの電波を受信してみましょう。
製作1時間、組み立て30秒、分解30秒の500円アンテナとは思えないすばらしい性能です。 低軌道衛星の信号なら地平線から地平線までとてもよく聞こえるでしょう。 衛星が動いていく様子も、“手にとるように”わかります。



エレメントを盆栽用のアルミ線で作った人もいます。電線で作った人もいます。ぐにゃぐにゃ自由に曲がるので持ち運び時は全部折り曲げてしまうそうです。 洗濯屋の針金ハンガーをほぐして作った人もいますが鉄線はあまりおすすめできません。 3mm径のアルミパイプと折れた釣竿で作った物は超軽量でポケットに入るとか。 皆さんもぜひ自分のアンテナを作ってみてください。

自作八木アンテナで衛星探しをする製作者(四アマ)

この6エレメント八木を 432 MHz用に作るのであれば、次の寸法図を参照ください。 輻射器のSWR調整の切りつめは6~7mm程度になるはずです。

432 MHz 反射 導1 導2 導3 導4 導5 導6
6 エレ 長さ 343
315 305 305 279

  間隔 0 64 140 286 445 610    



Original article at URL http://www.clarc.org/Articles/uhf.htm
原本の日本語版
Original article at URL
http://www.wa5vjb.com/yagi-pdf/cheapyagi.pdf

注:著者より原本の記事には間違いがいくつもあるので こちらにある情報を参照されたしとの連絡がありました。 このJAMSAT改訂版記事では寸法表と輻射器の形状を新しい仕様に修正しています。

同著者により新たに発表された145MHzと435MHzのデュアルバンド八木アンテナの自作記事がこちらです。


文責 岡本健男 AF6TK

Original edition July 1, 2000
Last update June 20, 2020
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