日本アマチュア衛星通信協会 第26回通常総会 会長挨拶 岡本健男 JA2PKI 本日はお忙しいところ、当協会の総会にお集まりいただきありがとうござい ます。早速ではありますが、皆さんが待ちかねておられる Phase 3D の現況 につきましてご報告いたします。 よく質問を受ける Phase 3D の打ち上げ予定ですが、これはまだ決まってお りません。これまでの経緯につきましてはニューズレターにも報告されてい る通りであり、まことに残念ではありますが致し方ないことです。現在も打 ち上げの機会を探す努力が Phase 3D のプロジェクトリーダーであるカール マインツァー博士 DJ4ZC を中心として続けられています。いま我々にできる ことは、カールがより良い環境で交渉を続けられるようにただ静かに見守る ことなのです。必ず近い将来に良い知らせがもたらされるものと信じていま す。 さて、衛星の開発チームは打ち上げが決まらないからといって手を休めてい るわけではありません。すでに衛星本体はオペレーション可能な状態にあり、 24時間の運用試験が続けられています。また Orbital Science 社の好意に より、同社のメリーランド州の施設において熱真空試験が行われれ、 Phase 3D は始めて宇宙環境を疑似体験しました。試験の結果は良好であり、 そこで見つかったいくつかの問題については対策が取られています。本日の 時点において、AMSAT Phase 3D Lab には各国から組み立てチームが集まり 、これから行う振動試験に備えた部品の固着などの処理とシステム全体の 動作試験が行われているところです。この中では我々の JAMSAT SCOPE カメ ラを含む、実験系と呼ばれるシステムの動作試験も行われ、正常に機能して いることが確認されています。 実は Phase 3D 計画については昨年末に一つの大きな判断がなされました。 それは、衛星の打ち上げ準備の作業を打ち上げ機が決定するまで一旦停止し て衛星を倉庫に入れて Phase 3D Lab を閉鎖するか、そのまま準備作業を 継続するかどちらを選択するかというものでした。Phase 3D Lab の閉鎖は 確かに省費用に大きな効果がありますが、一方で熟練技術者と貴重な作業環 境を失うことを意味しました。結局、作業を継続することに決まり、そのた めに必要となる経費を補うために AMSAT-DL の打ち上げ資金から $150,000 を投入することが決まりました。痛みを伴う決断です。 Phase 3D 計画の資金不足はその時すでに深刻でしたが、ますます深刻さの 度合いを深めることなりました。また会員の皆様に支援のお願いをすること もあろうかと思います。その際は宜しくお願いいたします。 さて、なかなか地上から離れない Phase 3D に関係者が苦労を重ねている一 方で、軌道上ではいくつものアマチュア衛星が元気に運用を続けております。 それらの有効利用を考えていただきたいと思います。その中でいくつかの衛 星や MIR の SSTV 運用について積極的に報告をしてくださっている会員の皆 さんに感謝いたします。 有人宇宙飛行におけるアマチュア無線の運用につきまして大きな進展があり ました。辻理事も参加してくださった国際宇宙ステーションに搭載するアマ チュア無線 の会議において明確な方向づけが決まり、搭載機器の具体的な仕 様の検討が始まりました。この ARISS 計画につきましては、JAMSAT として できる範囲で支援をしていきたいと考えております。 さて、協会内の現況に話を移したいと思います。もっとも深刻な問題は会員数 の減少です。他のアマチュア無線関係団体においても同様な傾向と聞いており ますので、致し方ないことなのかもしれません。また、Phase 3D の打ち上げ がのびのびになっている状況が少なからず影響していることは否めません。こ のような状況下でどのような会員増対策が打てるのか理事会としても苦慮して いるところです。現状維持を目指すとしても会費収入減による収支の圧迫はす でに限界に達しており、経費の節減策について可能なところから手を打って きてはおりますが、なんらかの収入増の対策をとなねばならない時期が来てい ると感じております。 このような状況下にありましても、運営が続けられているのはひとえにボラン ティアの方々の努力と会員の皆様の支援があってのことです。心より感謝いた します。これからも変わらぬ支援をお願いいたします。